京都駅には、父が自ら迎えに来た。
かなり驚いたが、恭(きょう)兄さまにしてみればいつものことらしい。
……いかに父が恭兄さまや、亡くなられた先代御当主を大事にしてたかを、改めて私は知った。
2人は慇懃な挨拶と言葉を交わしながら、車に乗り込む。
当然車の中にも厳格な序列が敷かれ、後部座席の運転手さんの後ろに恭兄さま、その隣に父、私は……助手席。
父と恭兄さまの会話に口を挟むこともできない。
当たり前のことなのかもしれないけど、少し淋しかった。
車は、恭兄さまのお家でとまった。
はじめて足を踏み入れる恭兄さまを、父が案内する。
この家には、建築当初しばらくの間、橘のおばさまと百合子姫が住んでたはずだが、その形跡は全く見られず、新しいまま歳を重ねているようだった。
「今夜は、恭匡(やすまさ)さまのお好きだったお料理を、こちらにお届けしますので、ゆっくりおくつろぎください。ご親族へのご連絡は、明日以降でよろしいですね?」
父の段取りに、恭兄さまは鷹揚に頷く。
……私は、この時、はじめて気づいた。
京都では、恭兄さまと私は、同じ家で生活できない、ということに。
迂闊だった。
私は実家で家族と一緒に過ごせるけど、恭兄さまはこの家に独り。
淋しくない?
「あの、お父さん?恭兄さまの毎日のお食事、心配なんですけど……私、こちらに」
「由未、けじめをつけなさい。お母さんが首を長くして待ってはるよ。」
言葉の途中で遮られたことより、怒られたことより、ご両親を亡くされた恭兄さまの前で母の話をしたことに対して、私は父を睨んだ。
父は私を一瞥もせず、恭兄さまに向かって家事のお手伝いのかたが来られる時間や曜日を説明していた。
そのかたが恭兄さまの食事も準備してくれる、らしい。
父と恭兄さまの事務的な話が終わると……え?お別れ?マジで?
「恭兄さま……」
後ろ髪引かれまくりの私に、恭兄さまが苦笑して頷く。
こんなはずじゃなかったのに。
ごめんなさい。
それなら、ずっと東京にいればよかった。
実家に帰っても、私は沈んだままだった。
久しぶりに会った母も兄も、家では父も私にとても優しくて……ますます私は悲しくなった。
恭兄さま、ちゃんと食べはったかなあ。
そればかりが心配で、悶々としていた。
見かねた兄が、夜中のドライブに連れ出してくれた。
「由未、変わったなぁ。」
兄にそう言われても自分ではわからない。
「どこが?」
懐かしい街並みをぼんやり見ながら気のない返事をする。
「かわいくなった。」
「……どぉこぉがぁ?」
かなり驚いたが、恭(きょう)兄さまにしてみればいつものことらしい。
……いかに父が恭兄さまや、亡くなられた先代御当主を大事にしてたかを、改めて私は知った。
2人は慇懃な挨拶と言葉を交わしながら、車に乗り込む。
当然車の中にも厳格な序列が敷かれ、後部座席の運転手さんの後ろに恭兄さま、その隣に父、私は……助手席。
父と恭兄さまの会話に口を挟むこともできない。
当たり前のことなのかもしれないけど、少し淋しかった。
車は、恭兄さまのお家でとまった。
はじめて足を踏み入れる恭兄さまを、父が案内する。
この家には、建築当初しばらくの間、橘のおばさまと百合子姫が住んでたはずだが、その形跡は全く見られず、新しいまま歳を重ねているようだった。
「今夜は、恭匡(やすまさ)さまのお好きだったお料理を、こちらにお届けしますので、ゆっくりおくつろぎください。ご親族へのご連絡は、明日以降でよろしいですね?」
父の段取りに、恭兄さまは鷹揚に頷く。
……私は、この時、はじめて気づいた。
京都では、恭兄さまと私は、同じ家で生活できない、ということに。
迂闊だった。
私は実家で家族と一緒に過ごせるけど、恭兄さまはこの家に独り。
淋しくない?
「あの、お父さん?恭兄さまの毎日のお食事、心配なんですけど……私、こちらに」
「由未、けじめをつけなさい。お母さんが首を長くして待ってはるよ。」
言葉の途中で遮られたことより、怒られたことより、ご両親を亡くされた恭兄さまの前で母の話をしたことに対して、私は父を睨んだ。
父は私を一瞥もせず、恭兄さまに向かって家事のお手伝いのかたが来られる時間や曜日を説明していた。
そのかたが恭兄さまの食事も準備してくれる、らしい。
父と恭兄さまの事務的な話が終わると……え?お別れ?マジで?
「恭兄さま……」
後ろ髪引かれまくりの私に、恭兄さまが苦笑して頷く。
こんなはずじゃなかったのに。
ごめんなさい。
それなら、ずっと東京にいればよかった。
実家に帰っても、私は沈んだままだった。
久しぶりに会った母も兄も、家では父も私にとても優しくて……ますます私は悲しくなった。
恭兄さま、ちゃんと食べはったかなあ。
そればかりが心配で、悶々としていた。
見かねた兄が、夜中のドライブに連れ出してくれた。
「由未、変わったなぁ。」
兄にそう言われても自分ではわからない。
「どこが?」
懐かしい街並みをぼんやり見ながら気のない返事をする。
「かわいくなった。」
「……どぉこぉがぁ?」



