ヒロインになれない!

「女って怖いな。……わかった。もう、しない。由未だけにしとく。そのかわり、覚悟せーよ。俺、性欲猿らしいから。」

……やっぱり、既にその辺のおねーさんを食い散らかしたんだ。
悲しいんだか、うれしいんだか、自分でもわけのわからない涙が滂沱する。
「スケベ。」

泣きながらそう罵って、私は和也先輩にしがみついた。
「好き!大好き!他の人と、もうせんといて!」

和也先輩は、何度もうなずきながら、私の背中を撫でてくれてた。
「……とうとう捕まってもーた。」
そうぼやく声は、けっこううれしそうだった。

しばらくして私が落ち着いたところで、中華街にランチを食べに行った。
「神戸の南京町がいっぱいあるみたいやなあ。」

関帝廟を見上げながら2人で写メる。
よくわからないながらも、一緒にお参りした。
手を合わせながら、和也先輩が私に問いかけた。
「俺にずっとついてきてくれるか?」

私もまた、御廟を正面に見据えて手を合わせたまま。きっぱりと答えた。
「もういらん、って言われても、離れへん。」

和也先輩は、肩で笑った。
「由未が言うなら、信じられるわ。」

私は、和也先輩にすり寄った。
3年越しの恋が叶う。

今。


ランチのお店は、上海料理系。
和也先輩はガッツリ系のランチセット、私は胸がいっぱいでそう食べられそうにないので中華粥を注文した。

一口食べて、化学調味料満載すぎることに気づき、舌が拒否反応を起こす。
……なるほど、恭兄さまは、外食の時にはいつもこんな感じなのかしら。
今まで何ともなかったのに、2ヶ月以上完全に化学調味料を排除してきたからか、私ははじめて実感した。
そういえば、中華料理には大量に入れるらしいもんなあ。

食べるのに困っている私とは対照的に、和也先輩は驚くべき食欲を堪能させていた。
ガツガツもりもり、背中を丸めるようにかがみ、かきこむ姿に圧倒された。
すごいな……。
こんな風に食べてもらったら、うれしい……かな?
私なら、もうちょっと味わってほしい気がするかも?

ぼーっと見とれてると、
「それ、食わんの?」
と、私の中華粥にお箸を向けた。

指し箸!

違う意味でドキドキしながら、私はうなずいた。
「ほな、もらうわ!」
そう言って、そのまま長いお箸でお粥のお碗を引き寄せようとした。

寄せ箸!

……お粥の入ったお碗はけっこうな重量で、うまく動かなかった。
「どうぞ。」
私は、お碗を両手で取って、和也先輩に渡した。

続いてスプーンを渡そうとしたら、和也先輩はそのままお碗に口を付けた。

お粥を飲んでる!!!

ぽかーん……と、口を開けて見てしまった。
わ、ワイルドだ……。