ヒロインになれない!

「行く!連れてって!私も、海、見たい!」

和也先輩が、私の頭をくしゃっとした。
「お前、タメ口になっとーで。」

私は、笑顔で和也先輩の腕にしがみついて言った。
「もう、同じクラブの先輩じゃないもーん」
ふりほどかれるかと思ったけど、意外と和也先輩は嫌がってなかった。
手をつなぎながら腕に絡みついて、私はすっかり浮かれてた。

初夏の山下公園は、新緑が美しかった。
ゴチャゴチャした海が、確かに神戸に似てるかも。

木陰のベンチで、和也先輩に肩を抱き寄せられて、そのままキスされた。
鳥が啄むように、優しく、唇をくすぐられる。
気持ちいいようなくすぐったいような刺激に、笑みがこみ上げてきた。
開いた口の中に、和也先輩の舌が入りこんでくる。
ゾクゾクっと、背中に震えが走った。
気持ちいい。
うっとりと、されるがままになっていたけど、次第に私の舌を絡め取られる。
まるでエスコートされて舌が一緒に踊っているかのよう。
ふわふわとして気持ちいい。

「由未……かわいい……今度、制服着てこーへん?似合ってたわ。」
唇を放した和也先輩がそう言った。

「ん……放課後なら……」
そう言いながら、けだるい瞼を上げて、和也先輩を見上げて……気づいてしまった。

和也先輩、卒業式の時と、違う人みたい。
あの時は、何て言うか、必死だった。
でも今は、余裕を感じる。
なんか、……やらしい……。

そういえば、今日は会った時から、以前と違った。
女性に全く慣れてなかった和也先輩からは考えられないような、対応。

和也先輩?
もしかして、童貞卒業してる?

私は、きゅっと目を閉じて、聞いた。
「和也先輩のものになりたい。あかん?」

怖くて目が開けられない。
少しの沈黙の後、和也先輩のため息が聞こえた。

「目ぇ開けぇ。」
両頬を両手で挟まれて、私は慌てて目を開ける。

和也先輩が、至近距離で私の顔を覗き込んでいた。
「あかん。何で、お前は先走るんや。今日は、俺がちゃんと言おうと思って来てるのに。」

何を?言うの?
和也先輩は、ニッと笑った。

「俺、Jリーグのチームにスカウトされた。もちろん卒業まで大学サッカーで成績残せるようにがんばるつもりやけど、卒業後の見通しもついたし、責任取れる自信ができた。」

Jリーグ!すごい!

「知っての通り、俺はサッカーしかできひんし、付き合っても何もおもしろくないと思う。練習休めへんし、自主練もあるし、会う時間も少ないと思う。それでもいいなら、付き合うか?」

思ってもみなかった言葉に、私はパチパチとまばたきした。

「う……浮気しない?チアリーダーの人とか、ファンの子とか……」
思わずそう聞いてしまった。

和也先輩は苦笑いした。