ヒロインになれない!

大学サッカーのリーグ戦が進むと、1回生ながら、和也先輩は試合で少し使われた。
しかも活躍した。
チア部の綺麗なお姉さんがたが、騒ぎ始めていた。
……やばい。
今までのほほーんとしていた私は、俄然、焦り始めた。

5月最後の土曜日、リーグ戦の最終戦には、知織ちゃんも一緒に来てくれた。
有名私立高校の制服は、大学生が試合しているサッカー競技場では目立ったようだ。
試合後、和也先輩からのメールが入ってきて、私は浮かれた。

『由未が来とるん、ピッチから見えたわ』

「え?たったこれだけで?うれしいの?」
知織ちゃんは呆れていたけれど、これだけでも私は幸せだった。

リーグ戦が終わってすぐの水曜日、和也先輩のお休みがやっときた!

この日は、恭兄さまの分だけお弁当を詰めておいた。
いつも通り学校へ行くふりをして、駅のトイレで私服に着替えて、制服やカバンをコインロッカーに押し込む。
欠席の連絡は知織ちゃんにお願いした。

9時に、待ち合わせの駅の改札口で和也先輩と落ち合う。
丸3ヶ月ぶりに対峙した和也先輩は、一回り大きくなっていた。
身長も伸びていたけれど、全体的に筋肉ががっしりと身を覆っていた。

かっこいい……。

「よぉ。久しぶり。元気やったか?」
照れくさそうに和也先輩がそう言った。

私は、涙うるうるになって、うなずいた。

「……その顔。」
和也先輩が、私の額をピン!と、指で弾いた。

「由未からメールとか来ると、俺、必ずその顔、思い出しとったわ。いつも泣いとーねん。あかんて。笑えや。」

私のことを思い出してくれてたんだ……。
そう思ったら、もう、ダメだった。
口を開いて笑顔を作っても、両目から涙がほろほろこぼれ落ちた。

「あ~あ~。」
そう言いながら、和也先輩は私を抱き寄せた!

え!?

自分の胸に私を抱え込んで、背中をぽんぽんと優しく叩く和也先輩。
「俺、ハンカチとか持っとらんし、シャツで拭いといてくれたらええから。」

……いや、さすがにそれは……。
私は、ドキドキしながらゴソゴソと和也先輩の腕の中で動き、ハンカチを取り出して自分で涙を拭った。

「なんや、もっとったんか。ほな、いこか。」
そう言うと、和也先輩は私の手を握った!

キャー!
キャー!
キャー!

私は、心の中ではしゃぎまくった。
手を繋いでる~!

「ど、どこ行くん?」

和也先輩は、切符を2枚買って、私に1枚くれた。
「海、行かん?」

海。

「神戸の海見て育ったから、3ヶ月見とらんのが寂しいねん。」
私は、大きく頷いた。