ヒロインになれない!

結局、私の存在って、和也先輩にとって、こんなもんやったんやろうな。

あー、笑える。
笑えて涙が出てくるわ。
私は、心の下のほうがすーっと冷えていくのを感じた。

「和也先輩。」
今度は私のほうから、和也先輩の両腕を掴んで、顔を見上げた。

「私も、はじめて会った時から、先輩が好きです。大好きです。付き合ってください!」
もはや、自分がキレてるのを自覚しながら、私は一気にそう言った。

和也先輩は、目と口を大きく開いて私を見た。
「マジか。ごめん。気付かんかった。」

……いや、気付いてないの、あなただけですから。
それも、和也先輩が私に興味がないから眼中に入ってなかっただけ……なんだろうな。

「いいんです、今、わかっていただけましたから。問題は、過去じゃなくて、未来です。これから、私のことも考えてみてくれませんか?」
人間、腹が据わると図々しく言えるものだな、と思いながら。

「いや、でも、俺、もう東京行くし。サッカー忙しくて、遠距離(恋愛)とか絶対無理やし。」
私は息を飲んだ。

「私も、4月から東京の高校に編入します。い、家の事情で!」
……声が上ずってしまった。
やっと言えた。

私は和也先輩を見つめて返事を待った。

でも和也先輩は、吐き捨てるように言った。
「……お嬢(じょう)の相手は、勘弁して。」

心が、打ち砕かれたかと思った。
涙があふれ出す。

和也先輩は、私の涙から逃げるようにその場を離れた。

私はうずくまって嗚咽した。
玉砕しちゃった。
わかってたのに。
一縷(いちる)の望みもないって、気づいてたのに。
何で言っちゃったんだろう。
阿呆過ぎる。
最初から叶うはずがなかったのに、執着心に翻弄されてた。
馬鹿……ほんまに、馬鹿……。

しばらくそうして泣き続けると、今度は虚しくなってきた。
終わったんだなあ、私の初恋。

ま、やっとこれで幕引きができた、ってことか。
苦い想いを飲み込み、ようやく立ち上がる。

と、少し離れたところに和也先輩が立っていた。

え?
さっき、確かに行ってしまったのに?
戻ってきた?
いつから?
涙でぼーっと考えが定まらない。

和也先輩は、頭を下げた。
「ごめん。俺、由未に八つ当たりした。告白してくれたのに、ごめん。」

八つ当たり?
……あおいちゃんに舌打ちされたから?

私は、ゆっくり首を横に振った。

和也先輩は、もう一度近付いてくると、私の顔を両手で掴み強引にキスした!

何で!?

唇を合わせるというより、唇を食べられてしまうかのような、荒々しいキスだった。

しかも、二人とも目を見開いて、互いを睨むかのように見つめあっていた。