ヒロインになれない!

その週の土曜日、一回戦はさすがに楽勝だった。

が、2日後の月曜日からは、中間テスト。
……部員達はみな、こちらは楽勝というわけにはいかず、苦戦していたようだ。

テストが終わると、すぐに二回戦。
順調に勝ち進んだが、結局、決勝戦で負けてしまった。

まあ、1、2年生だけでよくここまでがんばってる、と、逆に思うけど。
そして、和也先輩は、2年生ながら、県のベストイレブンに選ばれた。
来年の国体にも出場できそう、らしい。
順風満帆なように思えた。

年が明けて、新人戦が始まった。 
まあ、我が校は、前回の選手権の県予選も既にこのメンバーなので「新人戦」では頭1つリードしてる気分だ。
当然本気で優勝を狙っていた。

……が……和也先輩が、三回戦でまさかの大転倒。
左足首を押さえてうずくまり、尋常でない痛みに立てないらしい。

和也先輩は、私を含め、号泣するマネージャーやファンの女生徒の前を、口惜しそうに担架で運ばれて病院へと直行。
精密検査の結果、骨折はしていなかった。
が、靱帯が完全に断裂していたらしい。

……和也先輩の抜けた穴は大き過ぎた。
珍しく今大会は優勝候補に挙げられ注目されていたのに、結局、三回戦敗退となってしまった。

数日後、和也先輩は、靱帯を縫い合わせる手術を受けた。
手術の翌日、みんなでお見舞いに行ったが、心配する部員をよそに、和也先輩自身はめちゃくちゃ元気で前向きだった。
一月でギプスも取れるらしい。

てか、その状態でも筋肉を落とさないために、病院のリハビリ施設をジムのように我が物顔で使い、上半身と大腿筋を鍛え上げていた。
私は、はじめて、和也先輩に尊敬のような気持ちを抱いた。 


春休みに入ると、和也先輩はすっかり以前の通り、いや、むしろ以前よりもパワーアップして、本格的な練習に戻ってきた。
チームに活気が戻る。
もうすぐ新1年生も入ってくる。
そんな、希望に満ちた明るい春の日曜日、ある事件が起きた。

春休み中は毎日練習が可能なので、日曜日だけはお休みとしている。
私はセルジュと2人で、2週間に1度の恒例となっている市立図書館へ行った。

サッカー関係の解説書やルールブックはこの1年でおおかた借りたので、これからはサッカー雑誌のバックナンバーを借りていこうと思うのだが……貸し出し制限は1人10冊か……セルジュ、2冊借りてくれたら1年分一気に借りられるねんけどな~。
……セルジュにお伺いをたてるべく、私は図書館を移動した。

セルジュがいつも立ち寄るのは、暗いフランス文学のコーナー。
ひょこっと覗くと、暗かった一角が急に、ぱっと電気がついたように明るくなった。
天井のカーテンを開けたらしい人を見て、私は息を飲んだ。

日の光に透き通って消えてしまいそうな、はかなげな美少女だった。