ちょうど到着した電車から、和也先輩が降りてくる。
「おはようございま~す!」
「お-。お前、こんなとこに住んでんの?」
「兄の友人の家ですけどね。あ、こっちです。」
私達は急坂をずんずんと上がっていった。
和也先輩は物珍しそうに、周囲のお屋敷をキョロキョロ見回していた。
「ここです。」
大きな石垣に広い広い芝生、少女趣味なバルコニー付洋館。
和也先輩は、ぽかーんと見上げて
「……ばり、金持ちやん。」
と、つぶやいた。
「やあ、いらっしゃい。君が、由未の先輩?」
にこやかにセルジュが出迎えてくれると、さらに和也先輩は驚いた。
「に、日本語!お上手ですね!」
……どうやら、セルジュが外国人に見えたらしい。
セルジュは苦笑して付け加えた。
「一応、日本人です。母がフランス人でしたけどね。どうぞ。庭に出やすいほうがいいでしょうから、テラスに席を設けてます。室内がよろしければ、居間をお使いください。」
「あ、ありがとうございます!」
「由未、マサコさんはまだお見えでないから、お茶を出してさしあげて。」
「はぁ~い。」
丁寧語のセルジュにすっかり圧倒されているかわいそうな和也先輩を残して、私はお台所へ行き、お紅茶とマカロンを運んだ。
その日、和也先輩は終始落ち着かないようだった。
あおいちゃんのノートの説明は、もちろんしっかりやったし、教え方がうまいとお褒めの言葉もいただいた。
でも、マサコさんの心尽くしのランチにも、15時のお手製ケーキにも、そもそもマサコさんの存在自体に困っていたようだ。
ただ、芝生でボールと戯れることだけはかなり気に入ったらしく、頭が煮詰まると庭に飛び出していた。
楽しそうではあったけれど、結局、私はいつものように見とれてることしかできなかった。
「ありがとうございました!またお邪魔していいですか?」
……居心地悪そうにしてたのに、夕方、和也先輩はセルジュにそう聞いた。
セルジュも意外だったらしいが、
「いつでもどうぞ。誰も使わないから、好きに使ってください。賑やかだと僕も気分が晴れるので。」
と、思ってもいないくせに、京都人のようなことを言った。
案の定、和也先輩は真(ま)に受けて、うれしそうに笑った。
「芝生、そんなにいいですか?」
駅まで送る道すがら私がそう聞くと、和也先輩は真面目に大きく頷いた。
「怪我の心配がないし、思い切ったことができよーねん。オーバーヘッドも高く飛べるで。」
……なるほど、確かに土よりクッション効いてるか。
「じゃ、また次のテスト前にもいらしてください。」
そう言って、和也先輩と駅前で別れてから、迷わずタクシー乗り場に並んだところ、どん引きされたようだ。
あとで、「お嬢やん!」とからかわれて、ものすごく後悔した。
「おはようございま~す!」
「お-。お前、こんなとこに住んでんの?」
「兄の友人の家ですけどね。あ、こっちです。」
私達は急坂をずんずんと上がっていった。
和也先輩は物珍しそうに、周囲のお屋敷をキョロキョロ見回していた。
「ここです。」
大きな石垣に広い広い芝生、少女趣味なバルコニー付洋館。
和也先輩は、ぽかーんと見上げて
「……ばり、金持ちやん。」
と、つぶやいた。
「やあ、いらっしゃい。君が、由未の先輩?」
にこやかにセルジュが出迎えてくれると、さらに和也先輩は驚いた。
「に、日本語!お上手ですね!」
……どうやら、セルジュが外国人に見えたらしい。
セルジュは苦笑して付け加えた。
「一応、日本人です。母がフランス人でしたけどね。どうぞ。庭に出やすいほうがいいでしょうから、テラスに席を設けてます。室内がよろしければ、居間をお使いください。」
「あ、ありがとうございます!」
「由未、マサコさんはまだお見えでないから、お茶を出してさしあげて。」
「はぁ~い。」
丁寧語のセルジュにすっかり圧倒されているかわいそうな和也先輩を残して、私はお台所へ行き、お紅茶とマカロンを運んだ。
その日、和也先輩は終始落ち着かないようだった。
あおいちゃんのノートの説明は、もちろんしっかりやったし、教え方がうまいとお褒めの言葉もいただいた。
でも、マサコさんの心尽くしのランチにも、15時のお手製ケーキにも、そもそもマサコさんの存在自体に困っていたようだ。
ただ、芝生でボールと戯れることだけはかなり気に入ったらしく、頭が煮詰まると庭に飛び出していた。
楽しそうではあったけれど、結局、私はいつものように見とれてることしかできなかった。
「ありがとうございました!またお邪魔していいですか?」
……居心地悪そうにしてたのに、夕方、和也先輩はセルジュにそう聞いた。
セルジュも意外だったらしいが、
「いつでもどうぞ。誰も使わないから、好きに使ってください。賑やかだと僕も気分が晴れるので。」
と、思ってもいないくせに、京都人のようなことを言った。
案の定、和也先輩は真(ま)に受けて、うれしそうに笑った。
「芝生、そんなにいいですか?」
駅まで送る道すがら私がそう聞くと、和也先輩は真面目に大きく頷いた。
「怪我の心配がないし、思い切ったことができよーねん。オーバーヘッドも高く飛べるで。」
……なるほど、確かに土よりクッション効いてるか。
「じゃ、また次のテスト前にもいらしてください。」
そう言って、和也先輩と駅前で別れてから、迷わずタクシー乗り場に並んだところ、どん引きされたようだ。
あとで、「お嬢やん!」とからかわれて、ものすごく後悔した。



