ヒロインになれない!

「……去年、俺らがインターハイ出られたんも、あおいのアドバイスが的確やったからや、って俺は思ってる。」
キックオフのホイッスルが鳴り、試合が始まるなか、頼之さんはそう言った。
「なんせこいつに相手チームの試合見せたら、1人1人の癖から思考回路から全部お見通しやねんから。」

「……でも情報を活かせるかどうかはプレイヤーの力量やし……」
あおいちゃんが困ったようにそう弁解する。

「……それで秋からしか手伝わんって言うてるねんな?ま、確かに今年のチームじゃ無理か。」

すごいこと言うてはりますよ、頼之さん。
もっと後輩を応援してあげてくださいよ……。
目を見開いて絶句していると、頼之さんは私を見て言った。

「来年はちょっと楽しみに思っとー。佐々木がおるからな。あいつは、勉強はできひんけどサッカーのセンスはずば抜けてるし。」

あおいちゃんも、うなずいた。
「うん、そうね。アホやけど、才能あるかな。県下で3指に入るかも。」
赤ちゃんを抱いた幸せな若夫婦のような2人は、さらりととんでもないことを言い合っていた。

試合は、この日はとりあえず勝った。
しかし、頼之さんとあおいちゃんの言う通り、今年は優勝できず、ベスト4で終わった。
インターハイには、常連校の私立高校が順当に勝ち上がって兵庫代表として出場した。

我が部では、3年生が引退となった。
……サッカー強豪校のように3年生が選手権まで残ることももちろん禁止ではない……が、一応我が校は進学校でサッカーより普通に受験する者が圧倒的に多い。
ちなみに昨年頼之さんは私大からスカウトを受けたそうだが、迷わず自力で受験を乗り越え京大に合格した。

和也先輩は、既にスカウトから注目されているので、もしかしたら3年の選手権まで残るつもりかもしれない。
……受験勉強をする気など毛頭なさそうだし。

先輩がキャプテンに就任すると、あおいちゃんはしっかりと参謀職に取り組むよう釘を刺された。
私達は、夏休み中かかって、強豪校の偵察に出かけた。




天高く馬肥ゆる秋10月。
我が校ではちょうど文化祭の土曜日に、高校サッカー選手権の県予選の抽選会があった。
和也先輩がキャプテンとなってはじめての公式戦。
とりあえず強豪校とは準々決勝まで当たらなさそうで、部員一同、ほっと安堵した。

気合に満ち満ちた和也先輩は、早速練習をしたがったが、文化祭をボイコットするわけにもいかない。
何より、グランドにはキャンプファイアーのために薪が組み上げられ、櫓(やぐら)まで立っている。