ヒロインになれない!

子供?子供?って言ったよね?子供???

吉川さんが私に気づいて、じっと見てはる。
……正面から見ると、本当に綺麗な女性。
見惚れて、ちょっと、ぽ~っとしてしまった。

吉川さんは、ふっと微笑して、声をかけてきた。
「大丈夫?竹原さん。腰、傷めとらん?」

え!私の名前!
何で知ってるの!?
驚いて、口をぱくぱくしてると、和也くんもこっちを見た!

「こけたんか?」

私はますます、言葉を失ってしまった。

やっと逢えた。
やっとお話できる。
やっと……あかん、涙出てくる……。

「だ……いじょ、ぶです……。」

「気ぃつけや~。吉川、それでな……」
和也くんは、私にそれだけ言って、また吉川さんのほうに向き直って話を続けた。

……気づいてもらえなかった……。
覚えてない……か。
ずーんと落ち込む。

しょんぼりして、自分の席に戻ろうとした時、吉川さんが和也くんのみぞおちを、殴った!?
ゲホッと咳き込みながら、背中を丸めて、みぞおちを押さえる和也くん。    
「……よ、よ……し川?」

「……なんでやねん。」
吉川さんがケロッとした顔でそう言った。

……意味がわからない。

唖然と見てると、和也くんも驚いているらしい。
「なんでやねん、はこっちや……急に、何しとんねん。」

吉川さんは、手首をぷらぷらと前後に振りながら言った。
「気に入らんかったから、突っ込んだだけや。『吉本』の漫才の真似。」

「あほな!今のはつっこみちゃうわ。バリ痛かったって。あんなん、裏拳や!」
……うん、私にもそう見えた。
漫才の突っ込みは、スナップ聞かせて、しかも、みぞおちに入れないと思う。

でも吉川さんは、悪びれず、さらっと言ってのけた。
「腹筋足らんのちゃう?ほら、無駄口たたいてんと、さっさと部活行き。」

和也くんは、不服そうだったけれど
「試合、小門(こかど)先輩も誘ってな。ほな、行くわ。……あれ?」
と、言って吉川さんのところから離れて出ていこうとして、もう一度戻ってきた。

そして、私の目の前にやってくる。
「……お前、なに中(ちゅう)?見覚えある気ぃしよーねんけど。」

一気に私の心臓がタップダンスを踊りだす。
く、口を開こうとするけど、声が出ない。

パクパクしてると、吉川さんが和也くんをからかった。
「佐々木、なに、ナンパしよるん。竹原由未ちゃんがかわいいからって、見え見えの手ぇ使って。」

「ダボが!……あ、『ユミ』や。思い出したわ。インターハイで逢うとんなあ?」

私は、コクコクコクッ!と、首を縦にふりまくった。