ヒロインになれない!

放課後、私はサッカー部の部室を尋ねた。
しかし、マネージャーの志願者は14人……1学年5人以内と一応決めているらしい。
私達は、サッカーに関する知識を問う筆記試験を受けさせられた。
……一応ルールは覚えていたのだが、私は現在活躍しているJリーガーも知らなければ、ブンデスリーガもわからなかった。

情けないことに、私はマネージャー試験に落ちてしまった。
なんだかなあ……

他の9人と共に部室を追い出されて、とぼとぼと教室に帰ると、そこに和也くんがいた。

なんで!?
1年の教室に、なんでいるの!?

去年の夏以来の至近距離(と言っても、教室の入口と窓際、それも対角線)に、足が震える。
私は、とても近づくこともできず、とりあえず、静かに自分の席に座ってみた。

男子も女子も、まだ数人が残ってわいわい話していたが、私の目は、彼らをスルーして、窓際の和也くんにロックオン。
夢にまで見た和也くんの学ラン……かっこええ~。

精悍さが増して、なんか、真面目そうに見える。
垂涎ものだ。

……あれ?
うっとりしていて気づくのが遅くなったが、和也くんがしきりに話しかけている相手は、女子だった。
それも、とびっきり綺麗な。

誰?

入学式に記念撮影があったけど、その時には居なかったと思う。
こんなに綺麗な人なら、気づかないはずがない。

私は狐につままれたような気分になった。
これは夢だろうか。
……いやいやいや。
そんなわけない。

私は、じりじりと移動して、2人の話し声に耳を傾ける。
「できひんって、言いよーやん。私、忙しいって、わかっとーやろ?」
美人がめっちゃ神戸弁使ってる……。

「おう、わかっとー。せやし、マネージャーせえとは言わんし。吉川は参謀。それでもあかん?」

……和也くんが、美人……吉川さん?を、勧誘してる……。
マネージャー試験に落ちてきた私は、ものすごく悲しくなった。

吉川さんは、ちょっと考えるような仕草をした。
物憂げな表情が、彼女の美貌を際立たせた。
「わかった。ほな、佐々木がキャプテンなったら、参謀したげるわ。インターハイ終わったら。それでいいやろ~?」
……和也くんのことを呼び捨てにした……そういえば、めっちゃさっきから対等な言葉遣い。

吉川さん、入学生じゃない?
留年……留学して1年遅れたとか?

和也くんは、うーんと唸って、渋々妥協したようだ。
「しゃーないな。ほな、せめて試合だけは見に来とってな。予習。いいやろ?」

「いいけど……休みの日ぃは、子供連れてってもいい?」

私は、がたっと椅子からずり落ちてしまった。