ヒロインになれない!

でも、私には、父や兄のような腹芸も駆け引きも、最初(はな)っからできない。
それどころか、この気持ちがほんまに恋なのかどうかすら、自信がない。
どうしよう……。

黙り込んだ私に、兄が、今度は真摯に言った。
「由未が、やっと俺以外の男に惹かれたんなら、多少は応援してやりたい、ってのも本音や。信用できひんか?」

俺以外、って。
私は苦笑してしまった。

「私に分けてほしいわ、その自信。」
「せやな~。どうすれば、由未は自分の魅力を自覚できるんかなぁ。」

魅力……私の?

「私にも、魅力ある?」
どちらかと言えば不細工ではないっていう程度のかわいげのない容姿、知織ちゃんのおかげでやっと成績を上げられた人任せな頭、親は嫌われものの成金、性格もそんなによくない……。

でも、兄は真逆なことを言ってくれた。
「由未は可愛いよ。充分綺麗や。やればできる子やし。温かい裕福な家庭で愛されてまっすぐ育ったいい子やで。ほんまに。」

……なんか泣けてきた。

「お兄ちゃん、もてるはずやわ。自分では正反対にしか考えられへんのに、お兄ちゃんがそう言うてくれたら、うれしくて心があったかくなったわ。」
そう言って、運転中のお兄ちゃんの肩に、頭を寄せる。

兄はそっと私の頭を撫でてくれた。
「……とりあえずは、和也くんを好きになってみればええけどな、あかんと思ったらさっさと見切りつけて、他の男にもちゃんと目ぇ向けや。最後は、由未が俺といる時よりも安心できる人を探すんやで。」

兄の言葉は、すーっと心に沁み渡る。
このひとよりも、安心できる人……か。

いるんかな、ほんまに。

こうして、私もまた、受験生の仲間入りをすることになってしまった。


春4月。
無事、志望校に合格した私は、神戸で高校生になった。

昔ながらの制服は……正直、女子はダサい。
でも、男子は学ラン!
京都では、絶滅危惧種の学ラン!
素敵!!!

昨年から、オープンハイスクール、願書請求、願書提出、受験、合格発表、制服採寸と、何度も来ているのだが、残念ながらいまだに和也くんの学ラン姿にはお目にかかっていない。

サッカー部の練習自体は目にできるのだが、その都度、不安になった。
なんで女子マネージャーが8人もいる?
そして、見学してる女子の数!
……全員が全員、和也くんのファンというわけではない……はずだが……。
えーん!不安だよー。

入学式の翌々日、生徒会や各委員会、クラブ活動の紹介があった。
サッカー部は、3年と女子マネ-ジャーが華やかに宣伝して行った。