「おやすみ」
小さくそう言って客間を出ようとすると、背後から声がした。
「あ~ったま、いって~!」
起きあがって、碧生くんが頭を押さえていた。
「二日酔い?頭痛薬いる?」
「今、何時?」
「まだ22時。飲み始めるの早かったから。」
碧生くんは低く笑った。
「日付変わってないじゃん。朝になっても酒が残って不調なのが二日酔い。これは、悪酔い。」
そうなんや。
ちゃんと区別あるんや。
「未成年やのに詳しいねえ。」
「え?俺、20歳過ぎてるよ。2年よけいに日本の勉強したから。」
あれ?そうなん?
……じゃ、未成年は私だけだったのか。
「ほな碧生くんもお酒飲めるんやね。ちょっと待って。お薬取って来る。」
そう言い置いて、私はお薬とお水をピッチャーごと準備した。
客間に戻ると、雪崩れたお布団は既に押し入れに納められていた。
「直してくれたんや。ありがとう。」
そう言いながら、お薬を差し出す。
碧生くんは変な顔をしてお薬を飲み、さらに水を2杯飲みほした。
「明日、何時?」
「2限。」
「ほな、ゆっくりやね。おやすみ~。」
そう言うて、お盆を持って戻ろうとしたら、碧生くんはボソッとつぶやいた。
「浴衣は反則だわ。」
「え!」
意識させてしまった?
恐る恐る振り向くと、碧生くんは赤くなっていた。
お酒のせいであってほしい。
「パジャマとして浴衣を着てるわけ?」
「うん。恭兄さまもそうしてるし。……お好きみたいやし。」
「ふうん。せっかく隠してたキスマークいっぱい見えてる。……まあ、隠し切れてへんかったけど。」
「!!」
私は慌てて逃げ出した。
恥ずかしい。
恭兄さまの、あほうっ!
私は寝室に戻ると、相変わらず幸せそうな寝顔の恭兄さまに苦笑した。
怒ってたはずやのに、毒気が抜ける。
しょうがないなあ。
大の字に広げた恭兄さまの腕を枕に、私も眠りに落ちた。
翌日からも碧生(あおい)くんは大学では私にまとわりついてきた。
どうやら彼は女子に人気があったらしく、気付けば私はただでさえ少ない女子学生からはじかれてしまっていた。
碧生くんは一向に気にしてなかったようだが、私との仲を誤解されることもしばしばだった。
裏門とは言え毎日恭兄さまに送り迎えしてもらってる私は、まるで二股をかけている悪女のように言われてるらしい。
「お願いやから、彼女作ってくれへん?」
私は幾度となく碧生くんにそう頼んだ。
「そのつもりで探してるけど。紹介してよ。京都の人で、髪を染めてなくて、着物が似合って、日本文化に造詣が深いお嬢様。由未みたいに家で浴衣生活させたい。」
さすが、帰国子女。
日本好きの外国人男性が挙げる条件みたいで、ちょっと笑えた。
小さくそう言って客間を出ようとすると、背後から声がした。
「あ~ったま、いって~!」
起きあがって、碧生くんが頭を押さえていた。
「二日酔い?頭痛薬いる?」
「今、何時?」
「まだ22時。飲み始めるの早かったから。」
碧生くんは低く笑った。
「日付変わってないじゃん。朝になっても酒が残って不調なのが二日酔い。これは、悪酔い。」
そうなんや。
ちゃんと区別あるんや。
「未成年やのに詳しいねえ。」
「え?俺、20歳過ぎてるよ。2年よけいに日本の勉強したから。」
あれ?そうなん?
……じゃ、未成年は私だけだったのか。
「ほな碧生くんもお酒飲めるんやね。ちょっと待って。お薬取って来る。」
そう言い置いて、私はお薬とお水をピッチャーごと準備した。
客間に戻ると、雪崩れたお布団は既に押し入れに納められていた。
「直してくれたんや。ありがとう。」
そう言いながら、お薬を差し出す。
碧生くんは変な顔をしてお薬を飲み、さらに水を2杯飲みほした。
「明日、何時?」
「2限。」
「ほな、ゆっくりやね。おやすみ~。」
そう言うて、お盆を持って戻ろうとしたら、碧生くんはボソッとつぶやいた。
「浴衣は反則だわ。」
「え!」
意識させてしまった?
恐る恐る振り向くと、碧生くんは赤くなっていた。
お酒のせいであってほしい。
「パジャマとして浴衣を着てるわけ?」
「うん。恭兄さまもそうしてるし。……お好きみたいやし。」
「ふうん。せっかく隠してたキスマークいっぱい見えてる。……まあ、隠し切れてへんかったけど。」
「!!」
私は慌てて逃げ出した。
恥ずかしい。
恭兄さまの、あほうっ!
私は寝室に戻ると、相変わらず幸せそうな寝顔の恭兄さまに苦笑した。
怒ってたはずやのに、毒気が抜ける。
しょうがないなあ。
大の字に広げた恭兄さまの腕を枕に、私も眠りに落ちた。
翌日からも碧生(あおい)くんは大学では私にまとわりついてきた。
どうやら彼は女子に人気があったらしく、気付けば私はただでさえ少ない女子学生からはじかれてしまっていた。
碧生くんは一向に気にしてなかったようだが、私との仲を誤解されることもしばしばだった。
裏門とは言え毎日恭兄さまに送り迎えしてもらってる私は、まるで二股をかけている悪女のように言われてるらしい。
「お願いやから、彼女作ってくれへん?」
私は幾度となく碧生くんにそう頼んだ。
「そのつもりで探してるけど。紹介してよ。京都の人で、髪を染めてなくて、着物が似合って、日本文化に造詣が深いお嬢様。由未みたいに家で浴衣生活させたい。」
さすが、帰国子女。
日本好きの外国人男性が挙げる条件みたいで、ちょっと笑えた。



