ヒロインになれない!

そうかと思えば、北海道談義。
てか、よくよく話を聞けば、2人は同じ高校の卒業生らしい。

一気に親近感がアップしたらしく、ひしと抱き合う2人。
なんだ?これ。
やれ、トウキビだ、よつ葉だ、トラピストだ、と、盛り上がっては抱き合っていた。

「恭兄さまの昔の舞台、見せてくれるんちゃうん?」
痺れを切らして、そう催促したけど、
「はい、これ、ビデオ〜。」
と、今時ビデオを渡されても、この家にはプレイヤーがなかった。
「DVDに焼けへんかなあ?」
「わかった。じゃ、今度。」
また来る気なんだ。

独りでしらふの私は、水菜のお漬け物でお茶漬けを堪能すると、酔っ払い2人に告げた。
「お先に寝ますね。」
恭兄さまは、私の声でハッと我に帰ったらしい。
「由未ちゃん、僕も。」
慌てて立ち上がろうとして、よろめいていた。
あーあー、もう。

「俺も。」
碧生くんは、四つん這いでこっちに来ようとする。
「君は、向こうの離れの客間を使えばいいから。お布団は押し入れに全部揃ってるよ。はい、おやすみ。」

恭兄さまは、手のひらで碧生くんの頭を押しやった。
「案内するわ。」
碧生くんのお布団を敷いてあげようと離れに向かおうとしたけど、恭兄さまに腕を掴んで引き寄せられて、べったりと両肩に体重を預けるように抱きしめられてしまった。
重い!

「由未ちゃんは、こっち。」
有無を言わさず、恭兄さまは私を寝室に連れて行くと、ベッドで大の字になって寝てしまった。
普段、お行儀よく眠る恭兄さまの大の字がとても珍しくて私は笑ってしまった。
しかし、これでは私の寝るスペースがない。
しょうがないなあ。

とりあえず、シャワーを浴びて浴衣に着替える。
髪を乾かしてから、そっと離れを覗いてみた。

碧生くんは押し入れのお布団の雪崩を起こしたらしく、枕の上で、敷布団の下敷きになって寝ていた。
これは放置していいんだろうか。
とりあえず風邪はひかないかもやけど、首・肩・腰にめっちゃ負担かかってそう。

「碧生くん?お布団、敷き直すえ?」
私は一声かけてから、空いてるスペースに、碧生くんにかぶさってる敷布団を敷き直した。
碧生くんの肩を押して
「ゴロゴロ転がってくれへん?」
と、お願いしながら回転させようとした。
「ん~~~~!」
碧生くんの両手が私をとらえる。
いや、それは、まずい!
慌てて振りほどいて逃れると、足で蹴るように、碧生くんを何とかお布団の上へ移動させた。
掛け布団をかけて、ほっとする。
雪崩れたお布団は、明日片付けてもらおう。