ヒロインになれない!

「……どうして……やろ?自分でもわからへん。でも、ずっとそうかも。自分に自信ないから?」
「そろそろ考えを改めたほうがいいね。あなたはとても素敵なんだよ。しかも現在進行形で、ますます綺麗になっていく。なのにあなたは隙だらけだ。」
「隙だらけ?」
「ああ。……僕以外の男に寝顔見せるとか、あり得ないから!」

……やっぱり、しっかり聞かれてた……。

「ただの講義中の居眠りやけど……」
「それでも、ダメ!講義中でも電車の中でも、寝ちゃダメ!目を閉じてもダメ!」

子供のようにそう言い張る恭兄さまに、私はつい笑ってしまった。
恭兄さまの目が光り、再び私は両頬をつかまえられた。

「笑顔も。僕以外の男に微笑みかけるのも、嫌だ。会話するのも、目を合わせるのも、嫌だ。」
「……それじゃ、私、社会生活できひんやん。やっぱり座敷牢に入ってんと。」

恭兄さまは、やっと触れあうだけのキスをくれた。

「だからね、ずっと一緒にいたいんだ。心配でしょうがないんだよ。」
「……私が、浮気するかもって?信じてへんってこと?」
何となく、形勢逆転のチャンスかな、と思って、少し強くそう聞いてみた。

でも恭兄さまは鼻で笑った!
「浮気なんかさせないよ。単に、あなたが隙だらけ過ぎるから心配なんだよ。……前例もあるし。……てか、普通はもうちょっと臆病というか、慎重になるんじゃない?どうしてそんなに隙だらけなの?」

……逆転失敗。
私は、古傷をえぐられて、しゅんとした。

「24時間そばにいて、あなたを守れたらいいのに。やっぱり大学進学はやめてもらって、結婚してしまえばよかった。」

本気でそう言うてる恭兄さまは、やっぱりちょっと狂気じみている、と思う。
しょんぼりしている私の両頬を、恭兄さまが両方向に引っ張った。
……あいたたた……何するんですか……

恭兄さまは、そのままじっと見て、頷いた。
「そうか。傷を付けなくても、肥満体にしてしまったら安心できるかも。よし、由未、肥りなさい。フォアグラ用の鴨や鵞鳥のように、無理矢理肥らせてあげる。」

……やっぱり、おかしいよ……恭兄さま。

「世の中には、デブ専もいると思います。」
私は恐る恐るそう進言して、脂肪肝化から逃れた。

その夜は結局、帯も解かれず、着物をはだけられたあられもない姿で抱かれてしまった。
しかもそのまま眠ってしまった。
……もうこの着物、着られないかもしれない……皺だらけ、シミだらけ。



翌朝、身支度を整えようと鏡を見て、びっくりした。

首にも胸元にも、腕にも、足にも、キスマークがいっぱい!
ひどいっ!