しばらくすると、香道や短歌の講習会に参加させられるようになった。
同時進行でお着物を自分で着ることを覚えた。
「結納の時も思ったけど、由未ちゃん、着物が似合うね。大学卒業したら、ずっと着物生活してみない?」
……そんな酔狂な……。
でも、私も恭兄さまの和服姿が好き。
「ずっとは無理でも、一緒にお着物でお出かけはうれしいかも。」
ついそう言ってしまったがために、恭兄さまはすっかりその気になられた。
気づけば、土日だけだったおでかけが、平日の夜にもちょこちょこ増えた。
お能、歌舞伎、バレエ、コンサート!コンサート!!コンサート!!!
もともとミュージカルや歌劇は大好きだったけど、恭兄さまの推奨するものは知識や下勉強が必要なものが多い気がする。
恭兄さま的には、私とそういうお勉強をするのも楽しかったらしい。
その日も、私は急いでいた。
3時限めの比較文化論が終わった後、慌ただしく荷物を鞄に詰めて席を立った。
ダッシュで講義室を飛び出した私は、後ろで誰かが私を呼び止めようとしたことに、全く気づかなかった。
恭兄さまのお迎えの車で帰宅してから、すぐにシャワーを浴びて、衣紋掛けに準備されている着物や帯を身に着ける。
……毎回コーディネートは恭兄さまが喜々としてやってらっしゃるのだが、私の気づかないうちに、あれこれ買い足してらっしゃるようだ。
今夜のうぐいす色の小紋も、はじめて見るんですけど……恭兄さま。
希和子ちゃんが着せ替え人形にならはらへんか心配してたはずが、気づけば私自身がそうなっていることに苦笑いしてると、恭兄さまが障子の向こうから声をかけた。
「いいかい?タクシーが到着したよ。」
「はぁい。」
私の返事を聞いてから障子を開ける、いつまでたっても律儀な恭兄さま。
今日は、錆浅葱の牛首紬にうぐいす色の帯の恭兄さま……うーん、何て爽やかでかっこいい。
「うん。似合うよ。かわいい。」
私を見て目を細めて笑顔になった恭兄さまは、心からそう言ってくれていた。
「……うれしいけど、また勝手に買ったやろ?もう!あかんて。」
なんぼ言うても無駄やけど、一応そう釘をさしておく。
「じゃ、行こうか。」
私の文句を一向に気にしてない恭兄さまに手を取られ、送迎のタクシーに乗車した。
今夜の行き先は、能楽堂。
……大学と目の鼻の先なので、和装にこだわらなければこんなに忙しい想いをする必要はないのだが……。
すっかりご満悦の恭兄さまのお顔を見ると、私は「ま、いっか」と思ってしまう。
同時進行でお着物を自分で着ることを覚えた。
「結納の時も思ったけど、由未ちゃん、着物が似合うね。大学卒業したら、ずっと着物生活してみない?」
……そんな酔狂な……。
でも、私も恭兄さまの和服姿が好き。
「ずっとは無理でも、一緒にお着物でお出かけはうれしいかも。」
ついそう言ってしまったがために、恭兄さまはすっかりその気になられた。
気づけば、土日だけだったおでかけが、平日の夜にもちょこちょこ増えた。
お能、歌舞伎、バレエ、コンサート!コンサート!!コンサート!!!
もともとミュージカルや歌劇は大好きだったけど、恭兄さまの推奨するものは知識や下勉強が必要なものが多い気がする。
恭兄さま的には、私とそういうお勉強をするのも楽しかったらしい。
その日も、私は急いでいた。
3時限めの比較文化論が終わった後、慌ただしく荷物を鞄に詰めて席を立った。
ダッシュで講義室を飛び出した私は、後ろで誰かが私を呼び止めようとしたことに、全く気づかなかった。
恭兄さまのお迎えの車で帰宅してから、すぐにシャワーを浴びて、衣紋掛けに準備されている着物や帯を身に着ける。
……毎回コーディネートは恭兄さまが喜々としてやってらっしゃるのだが、私の気づかないうちに、あれこれ買い足してらっしゃるようだ。
今夜のうぐいす色の小紋も、はじめて見るんですけど……恭兄さま。
希和子ちゃんが着せ替え人形にならはらへんか心配してたはずが、気づけば私自身がそうなっていることに苦笑いしてると、恭兄さまが障子の向こうから声をかけた。
「いいかい?タクシーが到着したよ。」
「はぁい。」
私の返事を聞いてから障子を開ける、いつまでたっても律儀な恭兄さま。
今日は、錆浅葱の牛首紬にうぐいす色の帯の恭兄さま……うーん、何て爽やかでかっこいい。
「うん。似合うよ。かわいい。」
私を見て目を細めて笑顔になった恭兄さまは、心からそう言ってくれていた。
「……うれしいけど、また勝手に買ったやろ?もう!あかんて。」
なんぼ言うても無駄やけど、一応そう釘をさしておく。
「じゃ、行こうか。」
私の文句を一向に気にしてない恭兄さまに手を取られ、送迎のタクシーに乗車した。
今夜の行き先は、能楽堂。
……大学と目の鼻の先なので、和装にこだわらなければこんなに忙しい想いをする必要はないのだが……。
すっかりご満悦の恭兄さまのお顔を見ると、私は「ま、いっか」と思ってしまう。



