ヒロインになれない!

そのまま私達は黙りこくってたけれど、明日のために私は煩悶を振り払った。

「寝る!明日早いねん!」
「ああ。由未はもう、忘れぇや。恭匡さんの従妹とだけ思ったらええで。」

兄は恭兄さまと同じようなことを言った。
……今更、なのかな。

「あ、お兄ちゃん!冷めて、スープ吸いすぎてぶくぶくに膨れたラーメン、ちゃんと食べてから寝てや!」
私はそう言い置いて、居間を出た。


翌朝はとても急がしかった。
朝8時に美容師さんが来てくれて、私と希和子ちゃんと母の髪のセットと着付けを順番にやってくれた。

私は、母の準備してくれた豪華な作家モノの振袖に一瞬言葉を失った。
どれだけ高くても、まだ希和子ちゃんが着てくれるから張り込み甲斐がある、らしい。
……とは言うものの、希和子ちゃんの振袖も私のお古ではなく、今回のために新しく作った艶やかな友禅。
この調子やと、結婚式の時にも新しい振袖を作らはりそうやな。
母が希和子ちゃんを可愛がってはることを知り、私は安堵した。
でも着せ替え人形にして、希和子ちゃんを窮屈にさせたらあかんで。


11時に、お仲人様ご夫妻と恭兄さまがやってきて結納は無事に整った。
……モーニングコートの恭兄さまは、とても素敵で……私は今更ながら一目惚れしてしまったようだ。

「紋付き羽織袴も見て見たいな……束帯姿とか……」

会食を終えて、お仲人夫妻をお見送りした後、恭兄さまにそうおねだりしたけど

「……コスプレ?」
と、首を捻ってらした。

この夜、恭兄さまがはじめてうちの実家に泊まられた。
当然のように、一番広くて豪華な客室を準備されていたけれど、恭兄さまは結局私の部屋のベッドで眠られた。

……シングルベッドでも2人で眠ことができるのか。
狭くて窮屈なことがとてもうれしくて幸せだった。


翌日、私達は竜安寺をお散歩した後、東京に帰った。

すぐに実家からの荷物が届く。
その中に、恭兄さまが私に買ってあげたかったという、ご大層な真珠のアクセサリーのセットが2組も入っていた。

「……真珠って、必需品なんや……」
黒い南洋真珠の3点セットと、ピンクがかった花珠の3点セット。

「うーん。粒も大きいし、品質もいいし、口惜しいけど納得の品だね。一生使えるよ。」
恭兄さまは本当にくやしそうでかわいかった。