ヒロインになれない!

「似てる?確かに2人とも品のいいお顔立ちやとは思うけど。」
『似てないよね。でも、僕、ちょっとうれしくなっちゃったよ。』
「む!問題発言!恭兄さま、ロリコンの疑いあるからな~。浮気しちゃダメ!」

私がそう言うと恭兄さまは、楽しそうにまた笑った。

『珍しいね。由未ちゃんが焼き餅やいてくれるの?ふふふ。……あ~、一晩ぐらいなら酔っ払って寝たらあっという間と思ってたのに……やっぱりあなたがいないと淋しいよ。長い夜になりそうだ。』
「あと10時間ぐらいでまた会えるんでしょ?我慢して、寝てください。じゃ、おやすみなさい。」
『あ、由未。』

電話を切ろうとしたけど、恭兄さまが私を呼んだ声がそれまでと違ったような気がして手を止めた。

「はい?」
『……今から言うことは、今宵限りで忘れてね。』
「へ?」
『……百合子には、義人くんやあなたと半分だけ同じ血が流れてる。』
「へ?」

何、言ってるの?

「恭兄さま、酔っ払ってる?……のよね?」

私はそう言いながらも、心臓がドキドキとうるさく脈打つのを感じた。

「だって、百合子姫、お兄ちゃんと……」
『由未ちゃん。それはもう終わったんだ。百合子、だいぶ変わっただろ?つらい想いを乗り越えて大人になったと思ってやってほしい。姉妹だと思えとは言わない。僕の従妹として優しく接してやってくれると、うれしい。』

頭が真っ白になった。
意味がわからない。
百合子姫が、誰の子って?
おばさまと、お父さんが?
それで、おばさまは離婚されたの?
お母さんは……知ってるの?

恭兄さまとの電話を切った後も、私は答えの出ない煩悶の中にいた。
……ダメだ。
もう一度居間に降りると、兄が先ほどのままテーブルに突っ伏していた。

「……お兄ちゃん……私も、希和子ちゃんも……百合子姫も……妹?」
「……聞いたのか。」

寝てるとばかり思ってた兄が声を発した。
起きてたんや。

「いつ知ったの?知ってて、手ぇ出さへんよね?」

兄は、ばつが悪そうに顔を上げた。

「デリカシーない奴やな。知ったから突き放したんや。古傷ほじくるなよ。」

……あの夏の日をぼんやりと思い出す。

「復讐、って言うてた。」
「ああ。傲慢やったな。……せやし罰が当たってんろ。」

兄が自嘲的につぶやいた。
親の因果が子に報い、か。

「何か、つらい。こないだ、百合子姫、私がうらやましいって言うてた。……それってそういうことやったんや。」

兄もつらそうな顔になった。

「……不憫やな。」