ヒロインになれない!

夜、兄が酔っ払って帰宅した。

「大丈夫?お水いる?」
「由未~。ラーメン作って~。」
「身体に悪いよ?」
「いいも~ん。作って~。」

私に甘える兄は珍しい。
しょうがないなあ、と、私はインスタントラーメンを調理して兄に差し出した。
兄は、うふうふ、笑ってた。
気持ち悪っ!

「ゆ~み~。俺な~、恭匡さん、好きやけどな~、ちょっとむかついててん。」
兄は上機嫌でそう言い出した。

「そうなん?なんで?……ラーメンのびるまえに食べてや。」

急かしても、兄はテーブルにあごを付けて、でろんでろんになっていた。
「せやかて、由未が悪いんやで。俺がいるのに、何で、恭匡さんに『兄さま』とか呼ぶねん。しかも、『お兄ちゃん』と『兄さま』やで。差ぁつけんなよ。」

……いまさら?

「ふうん。お兄ちゃんも、恭兄さまに嫉妬してた?恭兄さまもお兄ちゃんに嫉妬してたってよ。仲良いね~。」

兄は、わかってるのかわかってないのか、にこ~っと笑った。

「せやで。俺ら仲いいねん。俺、恭匡さんやったら、由未任せていいねん。でも、『恭兄さま』はあかん。他の呼び方せえ。」

……う……痛いところをつかれた。
実際、私はそろそろ「恭兄さま」と呼ぶことを改めるべきだろうとは思ってるのだ。
でも、他に思いつかない。
……恭兄さまも、「ちゃん」付けをやめようとしているが、なかなか上手くいかないらしい。

「仲よぉせぇよ……」

むにゃむにゃと聞き取れない言葉を発していた兄は、やっと最後に理解できる言葉を残して、完全にいびきをかいて寝てしまった。



私は、兄に毛布をかけてから自室に戻り、もう1人の酔っ払いに電話をかけた。

『……由未ちゃん。希和子ちゃん、喜んでくれてた?』

恭兄さまは意外としっかりしているようだった。

「たぶん。大事につかってくれるといいね。」

希和子ちゃんへのお祝いは、恭兄さまが選んだ真珠入りのシャーペンとボールペン。
ゴールドのリボンモチーフがかわいい。

『ふふふふふ……』
笑ってる……やっぱり酔っ払ってるのかな?
「ご機嫌さん?楽しいお酒でしたか?」
『うん。あのね、希和子ちゃんが僕の腹違いの妹だって、勘違いされてるらしいよ。』

は?

「なんで?」
『さあ?世間は、竹原が何の脈絡もなく孤児を養女にしたことに理由を付けたいんじゃない?タイミングよく僕らが婚約するし。だからこないだ、おばも希和子ちゃんのことを気にしてたんだねえ。』

恭兄さまはそう言いながらもクスクスと笑い続けていた。
笑い上戸?