ヒロインになれない!

「ちなみに、私が恭兄さまと結婚したら、席次はどうなるんですか?」

原さんにうかがうと、
「天花寺(てんげいじ)家の奥様となられたら、社長は由未さんを立てられるでしょうが……」
と、そこまで言ってから、原さんが恭兄さまのほうを見る。

恭兄さまは苦笑して引き受けた。
「そうですね。正式な場所ではそうせざるを得ませんが、内々では僕は逆に父と敬いますよ。入籍したら竹原社長が当然上座です。」

原さんは明らかにホッとしたようだった。

「そういうもんなんや……」
やっぱり聞いておかないとわからない。

車は恭兄さまの京都のお家に到着した。
「義人さんが、恭匡(やすまさ)さまを夕食に誘いに来るそうです。」
「わかりました。では明日また。由未ちゃん、今夜は早寝するんだよ。」
「恭兄さまもね。お兄ちゃんと飲み過ぎないでね。」

ひらひらと手を振って、私たちは離れた。
……別々のお家で眠るのは、今日が最後……のはず。
結納を交わしたら、これから同じ家に帰るんだ。
私は鼻息荒く、実家へと向かった。

私の帰宅を出迎えてくれたのは、希和子ちゃんだった。
「ただいま。希和子ちゃん、卒業おめでとう。中学入学の準備もあるのに、こんな時期にバタバタさせてごめんね。」

ふるふると首をふって
「おかえりなさい、お姉さん。」
と言って赤くなった希和子ちゃんは、めっちゃかわいかった。

お姉さんって呼ぶように言われたのかな?
少しくすぐったく感じながら、私はバッグの中から小さなプレゼントの包みを2つ取り出した。

「これ、卒業のお祝い。で、こっちが入学のお祝い。」
順番に渡してると、母と兄も出てきた。

「あら、希和ちゃんにだけお土産?うちには?」
「ケーキ買うてきた。」
母に紙袋ごと渡す。

「希和、何もろたん?」
兄が希和子ちゃんの肩に手を置いてそう問いかけると、希和子ちゃんはますます赤くなって困っていた。

「ほら、思春期の少女に気安く触れてんと!」
兄の手の甲を軽くはたいたけど、何だか希和子ちゃんに同情してしまう。
……血の繋がった実の兄でも素敵だとときめくのに。
希和子ちゃん、これから大変やろな~。
好きになるなっていうほうが、無理だ。

夕方、兄が恭兄さまのところに出かけてから、私は希和子ちゃんの部屋を訪ねた。
希和子ちゃんは、いかにも緊張していて、打ち解けるのには時間がかかりそうだったけれど、とりあえず伝えたいことは言った。

「もし、どこかへ逃げだしたくなったり、この家を出たくなったら、私に連絡ちょうだいね。離れてるけど、本当に姉だと思って、いつでも頼ってね。」

希和子ちゃんは突然そう言われて面食らっていたけれど、しばらく私を見つめて、黙ってうなずいた。

ま、気持ちが伝わればいいや。