恭兄さまが目を開ける。
うつろな瞳が動いて私を捉えると、急に目に光が灯り、恭兄さまはガバッと起き上がった。
「由未っ……よかっ……」
恭兄さまに引き寄せられ、ぎゅーっと抱きしめられる。
息苦しいほどに力を入れられて、私少しめまいを覚えた。
「恭兄さま……私……苦しい。結婚したくない。」
恭兄さまはそのままフリーズしてしまった。
力の抜けた恭兄さまの腕からすり抜けて、私はカウチに座った。
「あと半月ほどしたら、あの桜が綺麗なのにね。残念。」
お庭の枝垂れ桜を指差して、私はそう言った。
「……私、天花寺(てんげいじ)家のこと、全然わかってへんかったわ。昨日のことかて、もっと早く言うといてほしかった。」
「……後から、少しずつ理解してもらえばいい、と思ってた。」
静かに恭兄さまがそう言った。
私は、桜の木を見つめながら返事をする。
「うん。たぶん、まずは形式を整えたかったのよね、完璧に。私が、誰からも後ろ指をさされないように。」
それは、わかる。
恭兄さまなりに私を守ろうとしてくれてたんだと思う。
「私が人形なら大人しく何も感じず、恭兄さまの準備してくださった雛壇に座って、いつまでも微笑み続けられるんやろうけどね。」
今まで言葉にならなかった小さな苛立ちが蘇ってくる。
綺麗な格好で座ってたらええ、って、なんやねん。
準備万端なりかさんと、当日まで何も知らなかった自分との差がどれだけ惨めだったか。
私は、恭兄さまをジロリと睨んだ。
「順番違うやん。まず私に全部話してくれな、親戚に対してもりかさんに対しても、要らん引け目感じてしんどいわ。」
恭兄さまは、憔悴して落ちくぼんだ目で私を凝視した。
「……確かに、僕らには会話が足りないようだ。さっき、松本くんには由未ちゃんを『甘やかしすぎ』と言われて、小堀さんには『言葉が足りない』と言われたよ。」
昨日2人が言ってたことを思い出して頷いた。
「僕は、あなたに負担をかけたくなかっただけなのにね。何で、こう、空回りしてしまうんだろう。」
しょんぼりする恭兄さまは、思わず抱きしめたくなるほどかわいかった。
「せやし、言葉が足りひんのでしょ。」
私は苦笑して、恭兄の肩に頭を預けた。
恭兄さまの手が、ためらいがちに私の背を回り、肩を抱かれる。
「受験勉強の邪魔をしないようにって、言葉を飲み込む癖がついたのかもね。でも、もういいから。全部話してほしい。少なくとも、りかさんに『そんなことも知らないの』って思われないように。」
「……なるほど。あなたは意外と負けず嫌いなんだね。」
恭兄さまが少し笑った。
うつろな瞳が動いて私を捉えると、急に目に光が灯り、恭兄さまはガバッと起き上がった。
「由未っ……よかっ……」
恭兄さまに引き寄せられ、ぎゅーっと抱きしめられる。
息苦しいほどに力を入れられて、私少しめまいを覚えた。
「恭兄さま……私……苦しい。結婚したくない。」
恭兄さまはそのままフリーズしてしまった。
力の抜けた恭兄さまの腕からすり抜けて、私はカウチに座った。
「あと半月ほどしたら、あの桜が綺麗なのにね。残念。」
お庭の枝垂れ桜を指差して、私はそう言った。
「……私、天花寺(てんげいじ)家のこと、全然わかってへんかったわ。昨日のことかて、もっと早く言うといてほしかった。」
「……後から、少しずつ理解してもらえばいい、と思ってた。」
静かに恭兄さまがそう言った。
私は、桜の木を見つめながら返事をする。
「うん。たぶん、まずは形式を整えたかったのよね、完璧に。私が、誰からも後ろ指をさされないように。」
それは、わかる。
恭兄さまなりに私を守ろうとしてくれてたんだと思う。
「私が人形なら大人しく何も感じず、恭兄さまの準備してくださった雛壇に座って、いつまでも微笑み続けられるんやろうけどね。」
今まで言葉にならなかった小さな苛立ちが蘇ってくる。
綺麗な格好で座ってたらええ、って、なんやねん。
準備万端なりかさんと、当日まで何も知らなかった自分との差がどれだけ惨めだったか。
私は、恭兄さまをジロリと睨んだ。
「順番違うやん。まず私に全部話してくれな、親戚に対してもりかさんに対しても、要らん引け目感じてしんどいわ。」
恭兄さまは、憔悴して落ちくぼんだ目で私を凝視した。
「……確かに、僕らには会話が足りないようだ。さっき、松本くんには由未ちゃんを『甘やかしすぎ』と言われて、小堀さんには『言葉が足りない』と言われたよ。」
昨日2人が言ってたことを思い出して頷いた。
「僕は、あなたに負担をかけたくなかっただけなのにね。何で、こう、空回りしてしまうんだろう。」
しょんぼりする恭兄さまは、思わず抱きしめたくなるほどかわいかった。
「せやし、言葉が足りひんのでしょ。」
私は苦笑して、恭兄の肩に頭を預けた。
恭兄さまの手が、ためらいがちに私の背を回り、肩を抱かれる。
「受験勉強の邪魔をしないようにって、言葉を飲み込む癖がついたのかもね。でも、もういいから。全部話してほしい。少なくとも、りかさんに『そんなことも知らないの』って思われないように。」
「……なるほど。あなたは意外と負けず嫌いなんだね。」
恭兄さまが少し笑った。



