ヒロインになれない!

昨日の朝、急に、親戚が来るって聞いて驚いたこと。
値踏みされてるような目と嫌みがしんどかったこと。
……怖かったおばさまが優しかったことはいいとして。
なにより、いつも優しい恭兄さまが冷たかったこと。

「これからもずっとこうなんかな、って思ったら耐えられへんかも。私、ワガママ?」

彩乃さんは相槌を打ちながら聞いて、最後にニヤリと笑った。
「ま、かわいいワガママかな。由未らしくないけど、それだけ結婚相手のことが好きで、甘やかされることに慣れてしもてんろ。心配して損したわ。」

私は、返答に困った。
確かにそうねんけど。

「まあでも、せやな〜。めんどくさそうな家みたいやな。やめといたら?」
再びそんなふうに彩乃さんが破談を勧める。

「彩乃さん家(ち)もめんどくさそうやけど……明子さん、平気なひと?彩乃さんも、結婚したら、人前では明子さんに冷たくする?」 
やっと聞きたいことを聞けた。
……明子さんは、彩乃さんの彼女で、「あきこ」さんやけど、セルジュには「あきらけいこ」と呼ばれてる。

彩乃さんは、胸を張った。
「ゆっとくけど、あきは、俺よりずっとできた奴やで。俺は家元の取り巻きのジジババが大っ嫌いやし、何言われても今更やけど、あきはあいつらの嫌味と小言にいちいち従って、文句のつけようのないように努力しとるわ。せやし、家元んとこでは2人きりになることも、会話することもないわ。そうせんと、あきが色々言われるねんて。」

何、それ!

「家元って、彩乃さんの実のおばあちゃんやろ?せやのにそんなんなん?」
「まあ、京都やからなあ。家元の直弟子ゆーたら、金と暇と自尊心持て余した鼻持ちならんやつらばっかりやわ。」
ひどい言い草だが、明子さんは大変な想いをしてはるであろうことはわかった。

「ほなぁ、彩乃さんは、明子さんと2人の時に、その分慰めたげるん?」
私がそう聞くと、彩乃さんはびっくりするほど赤くなった。

「あほな!そんなことできるわけないわ。まあ、感謝と尊敬はしてるけど、本人には『いつでもやめたらええねんから無理するな』としか言えんわ。何言うても、がんばってしまう奴やからな。」

……彩乃さんらしいな。
不器用でわかりにくいけど、優しくてあったかい。
彩乃さんの無頼漢な雰囲気も大好きやったけど、今日の彩乃さんもかわいくてかっこよく感じた。

「じゃあ、彩乃さんの実家では?」
「うち?うちは、なんも。気楽な家やからな。これからもあきに対して特になんも言わんやろ。」
「ううん。彩乃さんの実家で、彩乃さんが明子さんに冷たいかどうか。」

彩乃さんは、頭をかいた。