ヒロインになれない!

……事件は今年の春に、カラオケボックスで複数のサッカー部員に暴行されたという女性の告発を受けたもので、多数の余罪が挙げられているようだ。

知織ちゃんがネット検索すると、余罪のいくつかと、口コミ情報がいくつも出てくる。
私と思(おぼ)しき事例は、今のところ見当たらなかった。

「サッカー部、無期限活動停止……やって。」
知織ちゃんがため息をついた。

「和也先輩……サッカーできはらへんにゃ……」
真面目に練習に明け暮れてる部員もとばっちり食うんや。

「……由未ちゃん……こんなこと言いたくないけど、ネット情報では1軍部員も参加してる乱交の告発も出てるみたい……」
同じ穴の狢(むじな)、か。

知織ちゃんがせっせと情報収集してる横で、私は何だかぼーっと呆けてしまった。
忘れようと思ってたのにな。
こんな風に、また蒸し返されるとは。

……てか、どこまでほじくり返されるんだろう。
私が被害を受けたこと、私が加えた反撃も、事情聴取されたりするんだろうか。
覚えてないけど、もし画像とか撮られてるとしたら、逃れられない。
怖くて不安なはずなのに、私の頭は、それ以上何も考えようとしていなかった。

ただ漠然と、もう恭兄さまとは結婚できない、とだけはわかった。
こんな醜聞、名家が受け入れるはずがない。

あっけなく、私は目標を失ってしまった。


私の携帯電話が震えた。
ビクッとして、恐る恐る着信者を確認する。
……お兄ちゃん。

「どうしよう。お兄ちゃん、鋭いから……」
自分がどんなボロを出してしまうか、怖くてオロオロする。

知織ちゃんが、人差し指を唇に当てて、私の携帯に出た!
「……もしもし?義人さんですか?ご無沙汰してます、知織です。由未ちゃん、今、進路のことで担任に呼ばれてはるんです~。」

私はドキドキしながら知織ちゃんを見つめる。
「……ええ!はい、ありがとございます。おかげさまで。ふふ、由未ちゃんもがんばってますよ。全国模試では私より順位、上やったんですよ。ふふふふ。」

……そういえば、こないだの模試では確かに知織ちゃんより順位が上だった。
定期テストでは相変わらず万年2位なのだが。

「え?ああ、さっき見ました!びっくりですよね。でも、よかった~。由未ちゃん、もし初恋まだ引きずってたら変なことに巻き込まれちゃったかもしれませんもんね。ん?ええ。恭匡(やすまさ)さんの話ばっかり(笑)。」

……どさくさに紛れて、何か言われてる気がする……。