ヒロインになれない!

私は脱力した。
「……そう……」

女の力って、やっぱり弱いのかな。
めちゃめちゃにしたつもりやったのに、そんなもんなのか。

……複雑な気持ちだった。


「よい、しょ。」
そう言いながら、恭兄さまが私を抱き上げる。
「傷の手当てをしよう。」

私は恭兄さまの首に手を回した。
恭兄さまは自分の部屋に連れて行き、救急箱を袋棚から取り出した。

「傷はそう深くないね。」
そう言いながら、しゅわしゅわと泡を出す消毒液を丹念に塗ってくれる。

絆創膏では塞ぎきれない大きさだったので、恭兄さまはガーゼと包帯で覆ってくれた。
「はい。あんまり無茶しちゃダメだよ。その度に、僕の寿命が縮むから。」

恭兄さまは、救急箱を片付けて、今度は箪笥から浴衣と博多帯を出してきて、私に手渡した。
「じゃ、これに着替えて。」

そう言って、恭兄さまは隣の部屋に行き、御簾戸の陰に隠れた。

少しためらったけれど、私は恭兄さまの浴衣をお借りして着替えた。
肌の弱い恭兄さまは、浴衣やシーツにも糊を効かさない……柔らかい浴衣にくるまれて、私は人心地をついた。

「浴衣、ありがとう。着たよ。」
そう声をかけると、少し間をおいて、恭兄さまがゆっくりこちらに入ってきた。

「こっちにお布団敷いたから。戸、開けてれば、安心して眠れるかな。」

……微妙。
そういうもんなのかな。
いや、別に、今夜すぐに抱いてほしいわけではないんだけれど……触れていたいというか……
せめて手を繋いでいたい……かな。

想いを伝えられずモジモジしてると、恭兄さまが苦笑して、手を差し出した。
私はその手に引き寄せられるように、ふらふらと近づく。

「足、痛くない?」
恭兄さまにそう聞かれ、頷きながら手を重ねる。

「……隣の部屋じゃ、まだ不安そうだね。」
苦笑する恭兄さまに、お願いしてみた。
「お布団並べていい?手ぇつなぎたい。」

恭兄さまは、ふうっとため息をつく。
「僕の忍耐力が試されるわけだね。わかったよ。どこまで我慢できるか、試してみようか。」
おっしゃる意味がわかりすぎて、私は赤くなって、それでもしっかり頷いた。

この夜から、恭兄さまと私はお布団を並べて眠るようになった。
恭兄さまは、お布団の間に1mほどの隙間を空けたけれど、手をつなごうとすると、私は自分のお布団からはずれて畳に眠ることになってしまう。

折衝して、隙間は50cmとなった。

……いつ、距離がゼロになるのか楽しみに感じながら、私は眠りに落ちた。