見事、試合をストレートでおさめて。
あたしはまっすぐ彼の元へと向かった。
「そういえば、名前なんていうの?」
「山本槇だけど…」
「槇ね。あたしのことは綾子って呼んで!」
最後までへっぴり腰だった槇。
そんな槇の第一印象は、結構良かったんだ。
この時のあたしは、理人先輩のことなんて頭になくて。
どうやって槇と仲良くなろうか、
そればかり考えていた。
試合も落ち着いて、浅海を引き連れて高江のところに行った。
「槇っ!」
あたしは思い切り槇を呼んだ。
「ん? えーと……綾子?」
そんなに乗り気じゃなかったくせに、
ちゃんと名前を覚えてくれてる槇が、
なんだか嬉しかった。

