「裄、ありがと」

「どういたしまして」


微笑み合うと、裄がそっとあたしを抱き寄せた。

人目なんて気にせずに、寄り添った。

そして、そっと唇を重ねた。

なんだか照れくさくて笑った。


「てか、なんで浅海、こんなとこいんの?」

「えっと…ブーツのかかと、折れちゃって」


そう言うと、あたしの前でしゃがむ裄。


「ん、乗れよ」

「え?」


もしやこれは、おんぶですか?


少し戸惑いながらも、裄の背中に乗るあたし。

勢いよく体が浮いて、視界が高くなった。


家までずっと、裄の温もりを感じてた。

裄に渡された箱。

あたしの頭にコツンと当たったそれは、裄がバイト先でもらったケーキだった。


「それ、後で一緒に食べような」

「うん」


《END》