「おはよー沙羅!!」

「おはよう」

いつも通りの挨拶を交わす。

私たちも、もうすぐ中学一年生になる。

早いなぁ…。

「ねぇねぇ、今朝のニュース見た!?」

「見た見た!!真宮中学校の一つのクラスメイト全員が死んでたんでしょ?」

「隣のクラスの男子も、一人だけ死んでたんだって!!その子だけは絞殺だったらしいよー」

「こわ~」

教室は今朝のニュースのことで賑わっていた。


私には関係ないと思っていたけど、まさか自分も同じ体験をするなんて、思ってもいなかった。


****

「バイバーイ!!」

友達と別れて、下校する。

「……あれ…?ぬいぐるみ…?」

道端にポツンと落ちた、羊のぬいぐるみ。

近寄ってみると、足が片方もげている。

可哀想…誰がこんなこと……。

『あの~……』

後ろから声がして、振り返る。

黒髪をツインテールにまとめ、フリフリのドレスのような服を着た女の子が、こちらを見上げていた。

『それ、梨杏のなの』

そう言いながら、羊のぬいぐるみを指差す。

「でもこれ、足もげちゃってるよ?」

『え…っ!?どうしよう…ママからもらった、たいせつなものなのに…』

粒らな瞳に涙を溜めながら、ぬいぐるみを抱き上げる梨杏ちゃん。

「……私でよければ、直そうか?」

『……直せるの…?』

「うん!針と糸で縫ってあげれば、直るけど…。肝心の足がないと…」

『それなら、梨杏持ってくる!!確か、結構前に壊れちゃったぬいぐるみがあったから、ぬいぐるみさんには悪いけど、切って持ってくるね!!』

「うん。分かった」

『じゃあ、明日の今の時間帯に、あそこのベンチに集合ね!!約束!』

梨杏ちゃんは、私の手をとると、自分の小指と私の小指とを繋いだ。

『指切りげんまん嘘ついたら針千本のーますっ。指切った!!』

ニコニコと笑いながら、小指を離す。

『じゃあ、また明日!』

「うん!バイバイ」

『バイバーイ!!』

羊のぬいぐるみを抱え、私と反対方向へと走って行く梨杏ちゃんの姿を見送り、家へと向かって足を進めた。


とても無邪気で、可愛い子だと思った。

けど、その笑顔には裏があるなんてことに気付いたのは、まだ先のことだった。

私は約束を交わしてしまった。

……あの子がニュースの犯人だと知らずに。