梨杏side

血の海。

死体が転がる、転がる。

フフフ……。

これで救われた…

羊さんは、これで救われたの。

もういじめられずにすむの。

『良かったね、羊さん♪』

しゃごみこんで、血飛沫を浴びた羊さんに話しかける。

包丁をゴトリと床に落とすと、後ろへポフンと倒れた。

私は羊さんを抱き上げて、その場から立ち上がり、玄関へと向かった。

『……あれ…?可笑しいなぁ…』

扉が開いていない。

結界も解いたし、ここはもう異界じゃないのに。

「……君は、誰……!?」

後ろから声がした。

そこには、制服を着た、一人のお兄さん。
結界を解いたから、異界に飛ばした人たちが戻ってきたのか…。

それにしても早いなぁ~、もう少し待ってほしいよ。

『……フフ…こんばんわぁ♪』

ニッコリと狂ったように目を見開いて笑う。

「!うっ……!?」

真正面から見れば、血がいっぱい飛び散ったままの服を着て、血飛沫を浴びた羊さんを抱いた私が見える。

「君…その血……」

『もう、ダメでしょ?結界破った直後に来るから、梨杏、帰れなくなっちゃった』

「梨杏…?君、小学生だよね…?こんなところでなにしてたの?」

『ねぇお兄ちゃん、ちょっとこっちにきてしゃがんでよ』

「え?う、うん……」

おずおずと警戒しながらもこちらに近付きしゃがむお兄ちゃん。

「……ねぇ…その血…誰か殺し……グ、ァ……ア゛ァ、ア…」

首を力強く絞める。

羊さんは私の隣に立っている。

『お兄ちゃんに知られちゃったからには、ちゃーんと殺さなきゃね♪』

「ア゛ァア゛、ァア゛……ガ、ァア゛……」

抵抗していた手が力なく垂れ、呻き声もしなくなった。

人間の死は、なんて呆気ないんだろう。

まぁいいや。

早く帰らなきゃ……。

私はドアのガラスを蹴破ると、羊さんを抱いて、学校を出た。

少し明るくなり始めている。

急いで帰ろっと♪

スキップ混じりに、学校の敷地を出た。

真後ろで、死体が嘆いているのを、見て見ぬフリをして。

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今回も楽しかった~♪

次はだーれかなっ♪♪