生徒会室の前で悩んでいてもどうせ入ることになるんだよな。

もはや開き直りの境地に到達したあたしは、なんのためらいもなく生徒会室のドアをノックした。




「たのもー」


「はーいどうぞー」



やる気のないあたしの声に返事をくれたこの高い声はおそらくハム先輩だ。



「1年1組31番生徒会雑用係牧村くるみです。昨日に引き続きお仕事をしにはせ参じました。」




ドアを勢いよく開けながらそんなことを言ってみた。


生徒会室の中の人たちはみなさんきょとんである。


しかもよくよく見てみると腹黒副会長がいないじゃないか。





「あれ?くるみちゃん今日来るなんて言ってたっけ?沼田君になんか頼まれごとでもされたの?」



「ハム先輩、わたしは雑用の楽しさに目覚めたのです。」



「うっそだー。」


「はい嘘です。」


「すぐ認めたよこの子。なんなのこの無駄なやりとり。」




ハム先輩がすぐにかけ寄ってきてくれたおかげですんなり生徒会室に入ることができた。


しかしまぁ腹黒がいないのか…ならばどう動こうか。



これはある意味都合がいい。

腹黒がやっていることを他のメンバーが知っているのか、ゆくゆくは探らなければと思っていたんだ。

それがちょっと早まっただけ。




こちらに先に探りを入れてみようか。


「すいません。実はここで食べたせんべいおいしかったんで、どこのせんべいだったのかなーと思いまして。

昨日帰った後に気になって気になって夜しか眠れませんでした。」



「寝たのかよ。」



「あ、会長お邪魔しますね。ところで中華まんの件はどうなりました?」



「お前な、1日で何か進展があると思うか?」


「思ったから言ってるんじゃないっすか。何事も変化が起こるときは一瞬っすよ。」



「お、おう…牧村、お前いいこと言うな。」



「いやーそれほどでもあるんっすよねこれが。たまにはいいこと言うんですよあたし。」



「ごめんウザいから前言撤回するわ。」



「一瞬で撤回された。」