いつもの朝と同じように駐輪場に自転車を置いていつものように昇降口に向かう。


その途中でもはやお馴染みになったメンツが絡んできた。

金髪、ちょんまげ、黒髪の三人組。



「先輩方、おはざーす。」


「…仮にも先輩にそんな緩い挨拶かましてんじゃねぇよ。」



タロー先輩にぱこんと頭を叩かれる。

全然力が入っていないただのじゃれ合いだ。



「先輩方も今登校したんですか?もう遅刻ギリっすよ?」



「くるみちゃんはもう少し焦りなよ。オレらだって一年の頃はもう少し真面目にしてたよ。」


仁先輩はなんだかんだ言って常識人だからな。この三人の中ではの話だけど。



「大丈夫です。今の時間でここにたどり着けていれば、あとはダッシュでギリセーフのラインです。」


「お前、そういうどうでもいいことの見極めとか得意そうだよな。」


「どうでもよくない!とても大事な線引きです。ということで、遅刻しないためにもダッシュしますね!あ、なんか用事ありました?」



「海に聞いた。」


「あぁ、3年を叩くってやつですか?」



「それ。なんかあったら頼れよ。」

「くるみちゃん、すぐ危ないことに首突っ込むからさ、オレたちも味方だってこと忘れないでね。」


「お前、危なっかしいもんな。」



「先輩方…!え、それを伝えるためだけにここにいてくれたんですか?何それイケメンかよ!かっこよ!!」


「…なんかお前を前にすると、どんなにシリアスパートでも脱力するわ。」



「ほんと、心配してる自分がアホらしいとすら思えてしまう。」


「だからこそストッパーが必要なんだろうよ。脱力させながら危険に突っ込んでいくから。」


「それもそうか。」



なんだかすごく不名誉なことを言われた気もするが、とりあえず今はもう走り出さないとチャイムに間に合わないためそこは掘り下げないことにする。




「先輩方、心配あざす!何かあったらよろしくお願いしますね!」



それだけ言って校舎に向かって走り出す。



優しい気持ちを向けられて、心はポカポカ、足取りも軽い。


こりゃ駐輪場から教室までの最速タイムを更新できそうだ。