「今日ね、珍しく出動だったんだ。」
その日の帰り道。
隣に並んで歩くマリリンに合わせて自転車にまたがったまま、ゆっくりと地面をけって進んでいく。
「怪我しなかった?」
「うん。余裕のよしこさんですよ。」
「よしこさんですか。」
ただ、今日の被害者はなんか変だったなぁ。
他言無用って伝えたけど、ちゃんと守ってくれるだろうか。
「相手、誰だったの?」
「2年生だったから全然名前とかわかんないのさ。たかちゃんって人はいた。」
あのなんかの扉開いちゃった変態ね。
「ばれてない?」
「名乗ってないもの。マリリンってば心配性なんだから!」
「そりゃあ心配すんだろ。お前、すぐ無茶するし。」
マリリンの一つにくくった黒髪が、冬の風にサラリと揺れた。
いつのまにか11月も終わりに近づいている。
今年もあと一か月弱で終わると思うとあっという間の一年だった。
年末年始が待ち遠しかった感覚はとっくの昔になくなって、今ではテンプレートのように明けましておめでとうを言うだけの正月になってしまった。
きっと年が明けたらあっという間に2年生になって、またあっという間に一年が過ぎていくんだろう。
「マリリン、正月は一緒に初詣にでも行こうか。」
「なんだ突然。まぁ、別にいいけど。」
風が冷たいのか、マフラーに顔をうずめたマリリンがもぞもぞと返事をする。
マリリンはあたしが急に話の内容を変えたところで特に気にも留めずにその流れに乗ってくれる。
「来年の正月は楽しみだ。」
「俺に会えるから?」
「うん。正月からマリリンに会えるとか、なんか運気上がりそうだね!」
「逆に俺がお前の運気まで奪ってやろうか。」
「そしたら奪われた運気の分マリリンと一緒にいるから問題ないもんね。」
「来年も一緒にいることは確定なのね。」
「え、確定じゃないの?!」
「2年でクラス離れたらどうすんの。」
「それは考えてなかったわ!今から先生にお願いしとかなきゃ!」
先生にお願いしたところで一緒になれるかわからないが、心を込めて菩薩のように目が細いうちの担任にお願いしたら菩薩パワーでなんとかしてくれるかもしれない。
「ま、クラス離れたとしても関係ないか。」
どうせ隣にいんだろ?と、ぼそりと言ったマリリンは少女漫画の王子様も裸足で逃げ出すかっこよさでした。

