黙々と勉強しているあたしに、今日の活動を終えた美術部員たちが「お疲れ」と声をかけて美術室から一人また一人と去っていく。
「江橋くんが来たら戸締りよろしくって言っておいてね。」
とうとう最後の一人、美術部部長が鍵を置いて帰っていった。
部外者のあたしに鍵を預けるというゆるゆるセキュリティ。
これでいいのか美術部員。
ちなみに、前にも何度かこういう状態になったことがあり、その時に聞いたら「牧村さんって悪い人じゃないでしょ?」と、純粋ビームを食らった。
純粋ビームとは穢れを知らない綺麗な塊で悪意を封じ込める超すごいビームである。
あたしには到底扱えない超すごいビームだ。
そんな間抜けなことを考えていると、美術室のドアがガラリと空いた。
「あれ、くるみ。来てたんだ?」
「うん。待ってた。」
「言ったら早く切り上げたのに。」
「マリリンの集中を邪魔するわけにはいかんでしょうよ。」
あたしの席に近寄ってきながら、そんなんいいのに、とつぶやいてあたしの頭をぐりぐりなでるマリリン。
「超大作?」
「どうだろな。いつもよりは頑張って描いてるかな。」
いつも頑張れよとは言わない。
だって、そんなことしたらあたしに構ってくれる時間が短くなってしまうから。
「描き終わったら構ってやる。だから、んな顔で見んな。」
どうやらマリリンにはあたしの心の内なんて全てお見通しのようだ。
敵わんなぁ。

