ベンチに向かって歩き出したとき。


「是永(これなが)」


後ろから声をかけられた。


低く落ち着いた声。


そのせいで体がビクッとなった。


そして瞬時に固まる。


だって私を知ってる人なんて…。


振り向くと私は再び固まった。


だって…。


「…春山(はるやま)くん…」


クラスメイトが立っていたから。


もしかして…。


嫌な予感が頭を過る。


…でも…いやまさかね…。


…同じ場所に居たとは限らないし…。


春山くんは制服姿に黒のエナメルバッグを肩に掛け、茶色のオシャレなリュックを担いでいる。


…どこからどう見ても部活帰り…なんだけどな…。