ダメよ!! 星!
まだ諦めちゃダメ!
シンデレラは必ず、運命の王子様と巡り会えるのよっ!
自分の頬を叩いて喝を入れていると、急に後ろからポンと肩を叩かれて、耳につけているイヤホンも外された。
「星〜。」
耳元で聞こえた声にゾッと鳥肌が立った。
夕雨もギョッとした顔でこちらを見ている。
「な、なに? 」
ギギギ、と効果音がつきそうな程ぎこちなく後ろを振り返れば、やけに整った顔がそこにはあった。
「コレ。 昨日忘れてったでしょ?」
「〜っ!」
「ん?」
手のひらに乗せられた水色のゴムをぎゅっと握り締めて、"ヤツ"を睨んだ。
"ヤツ"勝ち誇ったような顔でフッと笑う。
野次馬女子からは、黄色い歓声が上がって、興味津々に見ていた男子からも感嘆の声が上がった。
「棗くんがっ! どうしてその子に!?
二人はどういう関係なの!?」
「あの子だれっ!?」
"棗くん"は、爽やかな笑顔で問いかけられた質問を交わしながらヒラヒラと手を振って教室を出て行った。
「星…あんた、顔が酷い事になってるよ」
夕雨が心配そうに尋ねてくるけど、生憎今は顔なんて気にしてる暇はないの。
「帰ったら覚えときなさいよ……」
どこかで聞いたことのあるようなセリフを口にしながら、握り締めたゴムを床に叩きつけた。