妄想シンデレラ



翔ちゃんーーー 小栗 翔 (おぐりしょう)は、この歴史ある伝統学園、鷲塚学園の数学教師 。


そして、私。


小栗 星 (おぐりせい) の従兄弟でもある。


翔ちゃんのお父さんは、私のお父さんのお兄さん。

小さい頃から、家が近くて本当の家族のように暮らしてきた私たち。


昔から面倒見の良かった翔ちゃんが、小さい頃からの夢の、教師になったことには驚かなかったけど。

入学式の時、翔ちゃんの姿を発見した時には、さすがに驚いたわ。



「とにかくっ、双眼鏡は外して授業を受けろよ!」

「はぁい」

「あと、"王子様捜し"なんて幼稚なこと高校生になってもするなっ!以上!」

「……はぁい」


歩いていく姿だけでも怒っているのが分かる翔ちゃんに少し笑ってから、沢山の生徒が行き交う中、教室に向かった。



「おかえり〜」

「ただいま」


教室に戻ると、夕雨が私の双眼鏡を片手にジュースを飲んでいた。


「ちょっと、壊さないでよ?
王子様捜しには絶対欠かせないモノなんだからね!」

「あーはいはい。 で、何言われたの?」

「そんな対したこと言われてないわ。

『"王子様捜し"なんて幼稚なこと高校生になってもするなっ!』

って言われただけ。」

「だよねぇ。 絶対そのことだと思った! だって星、最近ホント真剣に王子様捜してんだもん! しかもすごく言いづらいんだけどさ……アンタ、いつもすごく顔怖いよ」

「ちょっと! 馬鹿にしてるの!?」


馬鹿にしたような顔で笑わないでくれるかしらね!

私は本気なんだからね!


「別に馬鹿にはしてないけどさ、夢見すぎだよ。 シンデレラに憧れてるのは分かってるけど…さすがに、ねぇ。」

「なに? 高校生にもなってそんなおとぎ話ばっか信じてる私が馬鹿みたいって?」

「なんだ、分かってるじゃん」

「いい加減怒るわよ!?
私は、本気で王子様を捜してるの!
ずっとずーっと、捜してるのっ。」

「だけど、見つからないのが現実だよね」

ふんっ! ホントむかつくわね!


幼稚園からのよしみなら、協力しようとかは思わないわけ?

いくら幼なじみでも、シンデレラを馬鹿にするのは許さないわよっ!