妄想シンデレラ



人通りの多い職員室前。

目の前に座る教師は、やけに偉そうに座っていた。



「数学のノート、小栗だけまだ出てないんだが。 どういうことだ?」

「さぁ。 どういうことでしょう?」

「もう提出期限から、一週間と二日過ぎてるぞ?自覚はあるのか?」

「ありません。」

「…」


目の前の数学教師は、頭を抱えてブツブツと何かを呟きはじめた。


…私、やらなきゃならない事があるのだけど、もう戻っていいのかしら?


踵を返して教室に戻ろうとすると、グッと後ろからカーディガンの裾を引っ張られた。


「待て! お前を呼んだのは、それだけじゃないんだよ!」

「……なに?」

「自分でも心当たりあるだろ。
……お前、"王子様捜し"も大概にしろよ?授業中まで双眼鏡首にぶら下げてるらしいな。
昨日、お前の担任に泣きつかれたんたよ」


何かと思ったら…。

私の日課に口出しするつもりなの?


そっちがその気なら…。


「あのねぇ、"翔ちゃん"。 私は、」

「っおい! その名前で呼ぶのはココではやめろっ! 恥ずかしいんだよ!」

「ふん。 いいじゃない、別に。
翔ちゃーん、翔ちゃ…」

「だーっ! お前帰ったら覚えとけよ!?」


いきなり大声をあげる"先生"を不審そうに見つめる沢山の通りすがりの生徒たち。
翔ちゃん、怒ると周りが見えなくなるから皆びっくりしているみたいね。


こんなの、日常茶飯事なのに…