ピーンポーンパーンポーン
『1年2組の小栗 星さん。
至急、職員室前まで来て下さい。
繰り返しますーーー』
春の暖かな日差しが差し込む昼休み。
「ねぇ、星。 聞こえてる? あんた呼ばれてるよ? ちょっと、 …っもう!」
レンズ越しにグラウンドを見ていると、急に視界が真っ暗になった。
横を見ると、呆れたように溜息をつく幼なじみと目が合った。
どうやら、彼女の仕業らしい。
私は微笑みながら彼女の手をどけて、できるだけ穏やかな口調で尋ねた。
「ねぇ。何してるの? これじゃあ前が見えないじゃない」
「あんた呼ばれてるんだってば!
早く行かなきゃ」
「行くって…何処へ?」
「……はぁ。」
首を傾げた私に彼女は再度溜息をついた。
「…とにかく、職員室前行って来て。
その首からぶら下げてる双眼鏡は、あたしが預かっとくから」
「全く。 私は忙しいのに、一体何の用なの?」
双眼鏡を、隣で手を出す幼なじみの夕雨(ゆう)に渡して私は教室を出た。