「なんか今日やたらと"王子様王子様〜"って言ってるけど、棗のことはもういいの?」
「…」
それを考えないようにするために今、こうやって必死なんでしょう!?
ちょっとは気付きなさいよっ。
何年幼なじみやってるのよ、全く。
そんな意味を込めて、ジロリと夕雨を睨むと彼女は、ん? と首を傾げた。
「…そうだったわ。 夕雨ってば、見かけはクールなのに中身は超鈍感っていうカワイソウな子だったわね。
ごめんなさい、すっかり忘れてたわ」
「ちょっとぉー馬鹿にしてる?」
してるわよ。
そう心の中で呟いて、改札を出た。
「ねぇ、アレ見て!」
駅の人混みから解放されて、自由の気分に浸りながらも目をギラギラにさせて街ゆく男子高校生を見ていると、
興奮したような夕雨の声がして腕を引っ張られた。
「ちょっと、痛いじゃない。
なんなの?」
「あのケーキ屋さん! めっちゃ大きくない? 最近出来たんだってさ〜」
夕雨が指差した先には、朝だと言うのに沢山の人……主に、女の人が大行列を作っていた。
「ふーん」
「めっちゃ美味しいんだって〜
いいよねー。食べたいなぁ」
「へぇ」
「ね? 行きたいねぇ」
「別に? 私が甘いの嫌いなの知ってるでしょう?」
「…」
何? その目は。
行きたいなら一人で行けばいいじゃない。
「ちょっと! 薄情なヤツ!
いつも耳にタコが出来るくらい聞かされてる星の"妄想"シンデレラストーリーを文句も言わず聞いてあげれるのは、誰だと思ってんのよっ」
つーん
薄情なヤツ。 なんて夕雨には言われたくないわね。

