「ふ〜ん。 で、棗の目を直視できなくなったの?」
「そうなの! 私、どうしちゃったの?」
「え、いや。あたしに聞かれてもねぇ。
まぁ、棗の事を意識し始めたってことじゃないの〜?」
朝。 待ち合わせの時間よりも、早くに夕雨の家に押し掛けていた。
ちなみに、夕雨の家は私の家の三軒お隣。
早起きの得意な夕雨は、いつも私の家まで迎えに来てくれるけれど今日は違う。
昨日、家で一人で考えると頭がおかしくなりそうだった。
なのでこうして、夕雨に相談している。
「…意識? ハッ。そんなわけないでしょう? 私がナツを意識する理由が一体どこにあるっていうの?」
「さぁ。 自分がよく分かってんじゃないの?」
そろそろ行くよ、と言って立ち上がる夕雨の顔は、どこかニヤけているような気がした。