あるワケないじゃん、そんな恋。

ショボくれた顔で羽田がやって来る。
私がさっさと逃げてしまったから、つまんない…と思ってるのかもしれない。


(だって、また泣きそうな気がしたもん……)


やっと気分上昇してきたから今日は朝から元気でいようと思ったのに、「店替わる…」とか言い出すし、どういう意味かもすぐには教えてくれないし。


(ホントにどういう意味よ。早く教えてよ…)



「キャン!キャン!」

「はいはい。ボール投げてだね、ペソ」


黄色のビニールボールを見せると、ちぎれんばかりに尻尾をフリフリ。

ペソはどんな時にも無邪気で可愛い。
羨ましいくらい。



「いくよー!」


思いきり腕を伸ばして遠くへ投げた。
小さな体を使って、猛ダッシュで追いかける。

ペソは足が速い。
ホントに感心する。


「あいつ、お前に似て異様に足速ぇな」


側に来た羽田が「ほら」とココア缶を手渡してくれた。


「でしょ?お陰でこっちも鍛えられてさ!」


学生時代よりも今の方が速く走れるかも。
社会人になってからの方が足速いなんて、それも変な話だけど。



「…お前、この間どこに隠れてたんだよ」


羽田の質問に振り返った。


「どこって…ずっと羽田を探してたよ。羽田はどこに居たの?映画でも観てたの?」

「観るわけねーだろ!俺だってずっと探してたよ!お前が行きそうな所全部!」

「私だって同じよ!ゲーセンも探したし、100均のお店も探した!……でも」