あるワケないじゃん、そんな恋。

……ガシャン!


落ちてきた缶コーヒーを手にしながら、昨日本部へ呼ばれた時のことを思い出してた。


人事部長は、俺を「新年度にオープンする予定の店の店長に任命したい…」と言った。


「君の仕事ぶりは佐々木君から聞いてるよ。今時には珍しく「上へ上っていこう…」という気構えがあるそうじゃないか。君みたいにヤル気のある男性が少ないんだよ!是非店長になって、会社の為に貢献してくれ給え!」


信じられないような申し出に面食らった。
佐々木さんがそんなふうに俺を評価してるとは思ってもいなかった…。


ーー確かに飲み屋で愚痴ったことはあった。
元カノと別れた頃で、企業のリーマンと比べられたのが腹立たしくて。


『いつかトップになって、見返してやる!』


ヤケ酒煽りながら叫んだ。
店長は俺を宥めながらも、「そうだ!頑張れっ!」って励ましてくれたんだ。


……思えば、あの立ち飲みバーで飲んだ日だったな。

あの日は深酒をし過ぎてて、ひょっとしたら紹介されてたお兄さんのことも覚えてなかっただけなのかもしれない。


あの店で菅野に「恋愛しないか?」と持ちかけた。
「恋を教えてやる」と言ったのに、まだ何も教えてねぇ。

気持ちを伝え合うだけでは恋愛は成立しない。
いろんな感情を抱きすくめて、一緒に進んでいかねーとーーー。



(菅野は、俺とそうありたいと思ってんのかな……)


何かっちゃ逃げてばかりいるよな。
寄ってきたかと思うと、するり…と背中を向けられる。