運命をさがして

「あの子は、中学生のころに脳の手術をしたの。
 成功したことはしたんだけどね。記憶におかしなとこがあるの。
 日常生活に支障はないんだけどね。どうしても思い出せないことがあるんだと思う。
 それを、本人が自覚してるの。それで、自分の消えた記憶を思い出そうとしてるの。
 周りは知っているけど、教えてしまうと、記憶に悪い影響を与えるかもしれないって
 アメリカのお医者さんが言ってた。だから、言えない。
 恭はもしかしたら、また手術を受けないといけないかもしれないの。
 たぶん、楽しい記憶が消えるのを恐れてるから、周りと関わらない。
 それに、病気のために かかる費用がすごくて。そのせいで両親が離婚したの。
 恭は、自分が楽しんじゃいけないって、思ってる。
 だから、あいつ、めんどくさいけど、いろいろよろしくね。
 あと、これは誰にも秘密。信用してるから。」

「わかりました。篠本君の心を開かせるの、がんばります。」

まみちゃんが、宣言する。うん、私も同感。

「あ、いや、普通にしといてくれるだけで・・・」

「ご心配なく。うまく悟らせないようにやります。」

谷村君もそういった。

「ありがと。よろしく。」

そう言って先生と別れた。