ふー

私は今、病室の前にいる。

ここを開ければ、記憶の戻った恭君がいる。

わたしをみた瞬間に、自分が思い続けてきた女と私が結びつくだろう。

いや、もう思い出してるかな?で、事実を確認するために、私を待ってるのかな?

なんて言われるだろう。

・・・・いや、なんと言われようと、私には関係ない。これからの関係に大きな影響もない。

昨日、決めたもん。

彼が好きなのは昔の私であり、変わってしまった今の私ではない。だから、告白されてしまったとしてもわたしは断る。恭君が昔の私を求めてしまうのは、お互いがつらいだろうから。

変わるとしたら、幼馴染になるってことかな。思い出話に花を咲かせる・・・・ってぐらいしかすることないけど。

もういい、開けよう。

今の自分の気持ちははっきりしているから。

もう、迷うことはない。

ガラ

恭君が振り向いて、私と目が合った。

「・・・・」

お互いに何も言わない。

もう、分かっちゃったんだろうな。

「・・・・・俺の願った運命、叶ったな。」

静かに言って、恭君がほほ笑んだ。