スタスタ…

玄関を出てから、2人で少し早歩きぎみで歩く。

「もうちょっと遅く歩きなよ」
「あ、ごめん…」

自分でも、緊張してんのがわかる。

ゆっくり歩いていると…

Rrrrrrrrrr…

「あ、俺の携帯…。母さんからだ。ごめん、ちょっと待ってて。」
「あ、うん。」

電話をするために少し離れた上杉。

しばらくボーッとしていると、後ろから猫がすり寄ってきた。

「にゃぁー…」

可愛い顔をした三毛猫だ。こう見えても私は、無類の猫好き。

「…可愛い…」

鞄をドサっと置いてから、しゃがみ込んで撫でてみる。

ナデナデ…

「んにゃぁ〜」

なんとも可愛い。可愛すぎる。


思わず、似合わない笑みをこぼしてしまう。

「あれ、浅野?」

心底ビックリした。
上杉、電話はやいな!!


「お、おー、上杉!電話はやかったな、はは、は…」

引きつった笑みを浮かべつつ、後ろに猫を隠す。
こんな見た目だから、猫好きだなんて恥ずかしい。

だが猫だ。私の腕をすり抜け、上杉の前に飛び出した。

「にゃぁーう」

「あ、あの、えっと…これは、その…」

必死に弁解しようとするが…

「隠さなくていいよ」
柔らかな物腰で言われた。

「好きなんでしょ?猫」

「…まぁ…」

少し照れる。


だが次の一言で、少しどころじゃなくなった。

「可愛い一面見つけちゃった。もっと好きになっちゃったかも」

絶対に今の私の顔は赤い。
そんなこと言われたら赤くもなる!

こいつは天才か、女をオトす天才なんじゃないのか?


恥ずかしすぎて、鞄の存在を忘れたまま、1人歩き出した。

「え、ちょ、浅野!?」

「帰る」

「バッグバッグ!」

「持ってて」
「えぇ〜!?」

私は最近、ドキドキする回数が増えた。

一緒に居れない時間は多いものの、確実にドキドキしている。

「ねー浅野、浅野ってば〜!」

次第に追いつく上杉。

「ねーねー
そういうの、ギャップっていうのかな」

「ううう、うるさいっ!ちがうし!」

私は…

「今それ掘り返すな!」
「えー?可愛かったのにー…」


上杉を好きに、なっているんだろうか。