然しながら僕は、ただやられっばなしだった訳ではない。

結果としてはフラれた形になったわけだが、

僕は一応彼女の唇を奪い、あまつさえ柔らかな乳を一瞬でも揉んだのだから

試合には負けたが、男としての戦いには勝ったと言えなくもない。

色仕掛けに負けた感があるが、それは男として仕方のないことであって、

むしろ最後までヤリ遂げなかった自分の理性を褒めてあげたいくらいなのである。

彼女としては、男を翻弄する私って悪い女…くらいの優越感に浸れたかもしれないが

彼氏がいるのにこんなほぼ無職に近い、ダメな冴えない男を惑わしても、

自分の価値を貶めるだけで、得るものはなく、超イケメンで、超尊敬できて、

超素敵だという、小栗旬似の彼氏にも申し訳が立たぬというものではあるまいか。

結局僕は理性的かつ論理的でありたいが故に、彼女の非理性的で感情的な部分に一喜一憂した数ヶ月を

送ったわけだったが、それが今日、今、この瞬間に終わりを迎えたわけである。

憎いとか、騙されたとか、泣き明かしたいという気持ちにはならないのが自分としては不思議である。

何故なら僕は、一応探偵だから。

探偵とは、何か?

探偵とは個人情報を暴くプロではないか、それがたまたま僕だったわけだ。

アイムソーリー、実は全てお見通しだったのだ。

君はさっき「私ってぶっ飛んでるんですよー」と言ったかもしれないが、

笑わさないで欲しい。

君はとんでもない男を相手にしてしまった。

薄ら笑いを浮かべながら「私ってぶっ飛んでるんですよー」と本当に宣って良い人間とは

どんなやつのことを指すのか、平凡な君にはわからないだろう。

僕は君が気に入った。I'm Love It!

「実は僕もぶっ飛んでるんですよー☆」

別れ際に放った僕の最後の言葉を、君は負け犬の遠吠えかと思ったかもしれないけれども。

こうして僕の、孤独な復讐劇は始まったわけだ。