衝撃が……ん?

……あれ?

……衝撃がこない。


キキーッ

車が急に止まる音。

私の上に覆い被さっている、男の人。


「タ、タク……?」


「っつー。

桜、無茶苦茶だな。」


この声は、間違いない、タクだ。


「え!タク?!

なんで?!

大丈夫?!」


瞬間。

今起こった事が理解できた。

固く身を縮めていた私を、タクがシーズーごと、道路の端に退かしてくれたんだ。

嬉しくて、でもタクに怪我がないか心配で。

好きって思いが溢れそうで。

必死に堪えてたら。

好きの代わりに、泪が出てきた。


「ちょっ、桜、泣くなよ。」


「サクちゃん、タッ君、大丈夫?!

ごめんね、ぼくのせいで。」


「大丈夫。

桜は俺が落ち着かせて行くから、お前は、シーズー連れて、さえさんのところに戻りな。

あ、この事は言うなよ?

みんなが心配するから。」


「う、うん。

わかった。」


ヤマト君、返事出来なくてゴメン。

今口を開いたら、好きしか出てこないから。

ごめんね。


「お前さんら、大丈夫か?

怪我してねぇか?」


車に乗っていた、おじさんが出てきた。


「あ、全然大丈夫なんで。

ご迷惑おかけしました。」


「そーかい?

わしも悪かったなぁ。

嬢ちゃんも大丈夫かい?」


返事が出来ないから、コクコクと必死に頷く。


「そーかい。

では、失礼するよ。

もっとお礼をしたいんだけど。

お、このミカン持っていき。」


「え、いいんですか。」


「えんよ、えんよ。

じゃあな」


おじさんが車に乗った。

ブルルンッ

車が遠ざかる。


私の目はまだ泪を流していて、ずっとタクの服を持っていた。


「桜、立てるか?

公園行こう。」


コクっと頷き、タクの服を持ったまま、タクについていった。