3 ある本

私は彼を理解しない事にした。

かつて遺された書物の中に、読解を自ら拒否するが如き本がある。

「ヴォイニッチ写本」

理解を拒む書物、読解不能な本。

それは何故、誰の為に、どんな目的で記されたのか、未だ誰にもわからない。

しかし、それ故にその本は世界一有名な本となった。

理解を越えているが故に、逆に衆目を集めてしまった本。

奇異で、とてつもなく難解な、唯一無二の存在。

私にとっての彼はそんな存在。

彼にしてみれば、私はコンビニに並ぶ雑誌のように、

解りやすくて、ありふれた存在。

One of them.

沢山の中の1人。