幸せは、きっとすぐ傍



良樹が言葉を止めた。まともに話したことの無い穂夏でも、後に続く言葉は容易に想像できた。


要は、良樹は彼女に未練を抱えているのだ。良樹の言ったように自衛官ではなく、たった一人の男として。そしてそれは、一人の男として見られたいという良樹の願いを表している。


「ねえ、良樹さん」

「……はい」

「私ね、別に自衛官に偏見なんて持ってません。友達の弟が防衛大に通ってるってのもあるけど、私は自衛官に偏見を持ってないし、寧ろ尊敬します。でも、それってもしかしたら良樹さんの言うように『自衛官』として見ていたかもしれない」


はい、と良樹が相槌を打つ。真剣に聴いてくれている彼に、穂夏は思わず言葉を落としていた。


「私、去年のクリスマスイブにフラれてるんです」

「……え、」


固まった良樹に、穂夏は自分の発言に気づく。無意識に落としたそれは穂夏の過去で、けれど他人に軽々と話せるほどの話題でもない。


それでも落としてしまった言葉は取り返しなどつかず、穂夏は次々と言葉を重ねていく。


「一夜の過ちってやつで出来ちゃったらしいんですよね、子供。責任取ってその子と結婚するって、だから別れてくれって言われました。わざわざクリスマスイブにですよ? 冗談きついって。私に対する責任はないんですかね。出来ちゃったのは仕方ないけど、もっと普通の、何でもない日に話してほしかったな……」

「……穂夏さん」


あれ、と笑いながらおかしいなと呟いた。


ぱたりぱたりと落ちていく雫は紛れも無く私の涙。自分でも何で泣くのか分からなくて、穂夏は次々と流れ落ちる涙を繰り返し繰り返し拭う。


だが涙は止まることを知らず、更に溢れて来るそれを堪える穂夏を、良樹がそっと抱き寄せた。