幸せは、きっとすぐ傍



「お仕事は大丈夫なんですか?」

「あ、……はい」


こくり、彼が頷く。それから何かに気付いた様子で、首を傾げながら訊いて来た。


「……穂夏さんは?」

「私は休みですから。気にしないでください」


そうですか……、と良樹が言葉を落とす。そうですよーと返しながらお粥をよそった茶碗を渡した。自分の分もよそうとご飯を食べはじめる。


「……あの、穂夏さん」

「なんですか?」


早々に食べてしまうと、穂夏は流しに食器類を重ねて水で冷やした。それから座った良樹の前に正座すると、話を聴く体勢を作る。少しの間沈黙して、良樹はそっと言葉を紡いだ。


「……訊かないんですか」

「だから、言ったじゃないですか。訊かないし言わない、って」

「……言ったら、聴いてくれますか」


ぱちぱちと目をしばたかせた。そう来るとは思わなかった。


けれど良樹は至って真面目だ。穂夏は一瞬沈黙してからこくりと頷く。その後ででも、と付け足した。


「私、言えないかもしれませんよ」

「構いません。聴いてほしいだけなんです。誰かに言いたくて……貴女なら、と思って」


自分のことは言えない。簡単に口に出せるほど、穂夏はまだ振り切れていないし忘れられてもいない。


そういう意味を込めて言うと、良樹はそう返してきた。だから穂夏は分かりましたと首肯する。


あまり深いことでも無いんですけれど、と前置きをしてから、良樹は言葉を落とし始めた。