幸せは、きっとすぐ傍





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穂夏さん、と自分を呼ぶ声で目が覚めた。どうして声がするのだろうか、考えてからはっとする。


そうだ、昨日人を拾ったのだった。


「おはようございます、良樹さん」

「おはようございます」

「身体の具合は?」


訊かなくても顔色を見れば分かるけれど、一応訊いてみる。明らかに昨日より良くなっている。


大丈夫です、と答えた彼の言葉が嘘ではないと感じ、穂夏は素直に頷いた。


「……あ、洗濯物」


回しっぱなしで干していない。せめて良樹のものだけでも乾かさなければと、穂夏は目を擦りながら立ち上がった。その前にやかんを火にかけ、彼に体温計を渡す。


昨日は計らずに寝てしまったけれど熱があったのは傍目に見ても明らか。しかも結構高そうだった。


一晩で下がるのは体力があるせいか、なら何故熱を出したのかとなるが世の中には例外というものがある。


立ち上がろうとする彼を手で制し、穂夏は干した洗濯物をストーブの風の当たるところに吊り下げた。ストーブの電源を入れ、炊飯器の中を覗き込む。


一晩中保温していたからか、ご飯は少し固くなっている。いつも多めに炊いているため、丁度二人分くらい残っていた。


それを鍋に入れ、沸かしたお湯と一緒にかける。残りのお湯でお茶を二杯入れると、片方を彼に手渡す。


大人しくベッドに座ってお湯を啜る良樹に安心し、穂夏は野菜を鍋に突っ込んだ。時計を見れば午前九時半。


よくよく考えると穂夏は仕事は休みだが、良樹はどうなのだろう。慌てていないから大丈夫なのかもしれないが――――考えている間に出来た野菜入りのお粥をテーブルに置きながら、穂夏は良樹に問いかけた。