幸せは、きっとすぐ傍



「……っあ、すみませ、」


大丈夫ですか。


言葉を紡ぎ終える前に、彼がふらり、身体を揺らす。それに悲鳴を上げそうになりながら、穂夏は彼の身体を支えた。


すみませんと謝った彼は明らかに辛そうで、触れている手からは熱が伝わって来る。けれど着ている服は濡れていて、穂夏は漸く彼がびしょ濡れだということに気付いた。


この人は雨宿りなどしていなかったのだ、と唐突に理解する。穂夏に寄り掛かる彼の吐息は熱い。


迷った末に穂夏は彼の身体を支えるようにして彼の腕を自分の肩に回すと、傘を差すことを諦めて彼に言った。


「家に来てください。そのままだと危ない」

「……構いませんから、」

「構います。放って置けません。ということで行きますよ、十分くらいですから頑張って下さい」


半ば強引に納得させ、穂夏は彼を支えながら家に向かう。一歩店の前から外に出ると雨が落ちてきて、私の身体も彼の身体もさらに濡れていく。それでも頑張って歩みを進める。


家には元彼の置いていった服があるはずだった。彼の方が体格はいいけれど、頑張って着てほしい。


十五分して家に辿り着くと、穂夏は彼を風呂へ叩き込んだ。その間にコートをハンガーにかけて吊しておき、ストーブを点けながら着替える。


濡れた髪の毛をドライヤーで乾かしていると、風呂場からあの、という声が聞こえた。


「どうしました?」


ドライヤーを止めて問い掛ける。と、躊躇いがちに声。


「タオル、って……」


あ、と慌てて立ち上がる。待っててくださいと声を飛ばし、タオルと着替えを脱衣所に置いておく。置いてあった彼の服を洗濯機に入れて回すと、穂夏は中へ声をかけてそこを出た。